第一回はどうするか。
悩みに悩みぬいて、むしろいろいろな意味での原点回帰という意味を込めて、東宝の『ゴジラ』(1954年)以降のゴジラシリーズの主役となった怪獣王・ゴジラの、昭和の最初のソフビ(の復刻版)を紹介するところからはじめることにした。
さてこのゴジラソフビ。
大怪獣ゴジラの初のソフビとして、当時品は大変価値があるものだが、その出自を調べようと思うと少々メンドクサイ。
まず、やはり歴史は塗り替えられず、円谷怪獣の始祖はゴジラであるが、あくまでも「怪獣ソフビ人形の始祖」は、1966年マルサン商店の『ウルトラQ』(1966年)での商品化、ガラモン、ゴメス、ペギラ、ナメゴンこれらのソフビが「怪獣ソフビ第一号」であり、ゴジラ(とバラゴンの東宝怪獣)は、『ウルトラマン』(1966年)放映時期の1966年初夏に当たる第二期の発売となっているのだ(元山掌氏、くらじたかし氏の証言あり)。カタログによれば、当時価格は350円。1966年当時の物価が、大卒初任給(公務員)21.600円 高卒初任給(公務員)16.100円 牛乳が20円 かけそばが50円 ラーメンが70円 喫茶店(コーヒー)が80円となっているので、牛乳やかけそばを基準に考えれば、今の価格だと2000円から3500円の価値が確認できて、これを1992年に復刻販売した時の価格2500円は、いろんな意味で「価格も物価的に正しく復刻」と言えたのではないだろうか。
ただし、ややこしいのだが、「怪獣を玩具にする原型」としては、実はゴジラがやはり一番古かった。マルサン商店はソフビ玩具に先駆けること2年前、1964年にゴジラとバラゴンをブリキ玩具や歩行プラモとして先に売り始めていたが、マルサン商店版ソフビのゴジラは、そのプラモ版金型をソフビに流用しているので、円谷東宝系怪獣玩具の原型製作としてはやはりゴジラが、元祖で最古なのかもしれない。
正直僕は子どもの頃、このゴジラのソフビはあまり好きではなかった。要するに「顔が似ていない」というのが理由だ。僕が知っているゴジラは、テレビの夏休み放映や新作映画などで見ていた『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)以降のゴジラであり、いくらマルサンテイストだ、レトロソフビのディフォルメだと言われても、ソフビ版の鋭角できつい表情の造形は、とてもゴジラには見えなかった(それが僕の主観だけでないことは、同じ「ゴジラの頭」で着ぐるみが造形された、マルサン商店の電動歩行プラモデルゴジラの大サイズや、70年代にブルマァクが改めて発売したソフビのジラース等は、しっかりゴジラ顔だったことで証明できる)。
なぜ、最初のSTサイズゴジラだけが鋭角顔なのか。この謎も次の一枚の画像で全ての謎が解ける。
そう。先ほども書いたが、マルサンゴジラSTサイズソフビは、1964年のプラモデルの原型を流用されて金型が作られている。そしてその時のモデルは(原型製作時まだ『モスラ対ゴジラ』(1964年)は公開前だったのか)明確に『キングコング対ゴジラ』(1962年)のゴジラ、通称キンゴジがモデルにされているのだ。
未来を見通す能力のない人間にとって「今」が結果であり最新であるのだから、キンゴジが最新版の時点で玩具を作ろうと思えば、キンゴジに似せるのは当然のことであろう。ゴジラの顔が歴代様々な事情や予算やコンセプト故に、毎回異なっていて、それが魅力であることはファンには当然の事実だが、特にこのキンゴジは、対戦する相手がキングコングという、類人猿の巨大化の哺乳類怪獣であったので、ことさら爬虫類的アレンジを強調して、その後も類似の系譜もないオンリーワンの「トカゲっぽい」顔つきをしている。
プラモデルのパッケージを見る限り、マルサンゴジラの顔はかなり努力してキンゴジに似せてきていることが分かる。