三留 で、それを持った彼氏を連れて、「早く! 早く行かないと、きっとファンがいっぱい来てるよ!」って焦って空港に向かったのね。けれど、ちょうどそのころ自衛隊のスパイ事件かなんかあったもんだから、空港がすっごく警戒が厳しくてね。誰を見送りに行くのかとか、身分証明書とかそういうの要求されて、検問というか、金属探知機ゲートみたいなのがあった。で「Ramón Gerardo Antonio Estévesさんを見送りにいきまーす! 〇〇便でーす!」とか適当言って(笑) で、すっごい早く行って(Martin Sheenを)待ち構えてるんだけど、ファンも来てないみたいで。そこへ、戸田奈津子)さんとMartin Sheenと奥さんの三人がやってきたのね。

(戸田奈津子=日本を代表する映画字幕翻訳家)

大賀 そこでナッチ(戸田奈津子の愛称)さんの登場か!

三留 戸田さんといえば。ずっと後になって、Charlie Sheen(Martin Sheenの息子)のインタビューした時に「私はあなたのお父さんに、8㎜持って会いに行ったのよ」って言ったら、そこで戸田さんが「あの時の子は、貴女だったの!?」って割り込んできた(笑) でもMartin Sheenは本当に紳士でね。私ね、彼が出演している映画の、ありとあらゆるプログラムを持っていったのよ。そしたらやっぱり『ある戦慄』が一番気になったみたいで、全部のページをじっくり見て行って。私が持ってきたプログラムに全部サインしてくれた。別れ際に彼が「こんなに遠くまで来てだいじょうぶ? ちゃんと帰れるのかい?」って心配までしてくれたの。

――素敵な話ですね。

大賀 今の三留さんの話を聞いていて、やはり実感したのは「インタビューは、決してアンケートになってはいけない」という、とても大事な部分で。

三留 そう。指南表になってもダメです。

大賀 僕もこの仕事を25年以上やってて、若い後輩とかにもよく言うんですけど、例えば僕が三留さんにインタビューしたとして「あなたにとって『映画とは』なんですか」って、絶対にそういう質問はしちゃダメじゃないですか。イチロー相手に「あなたにとって『野球とは』」とかみたいな。

三留 あはは(笑)

大賀 三留さんのお話で「あ、そうだよね」って思ったのは、インタビューって、される側はある程度、相手がどんな質問をしてくるか。普通であれば自分がなにを聞かれるか。その辺りは全部予測して迎えてくれるわけじゃないですか。

三留 うんうん。

大賀 そこで僕らはインタビューをする。大事なのはその時間が終わった後に、インタビューを受けてくださった方に「あなたが相手だとしゃべりすぎちゃう」とか「ついつい語り過ぎてしまった」と思ってもらわないと、誰がやっても同じ結果になっちゃうんです。それはプロとしてはダメだと。インタビュー前に、相手の経歴や身の上までしっかり調べておくことは論外の当たり前として、それ以上に踏み込んだ「こいつ、なんでこんなことまで知ってやがるんだ」っていう、でもそれは計算だけではそう思わせられないんだけど、そのツボを押せるかどうかって、プロ(の批評家)をやっていく上で、とても大事な部分なんだと感じたわけですよ。

三留 そうなの。そう。それと、キャッチボールが出来なきゃダメなのと、(相手の話を)拾わないとダメなの。その結果、話が意外なところに振れちゃったりするから面白くなるの。全然思ってもない方向の面白い話が(相手とキャッチボールすることで)出てきたりするの。それがやっぱり「インタビューの醍醐味」なのよね。

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