三留 昔は結構(上映期間が)長かったんだよねぇ。『ノストラダムスの大予言』(1974年 監督: 舛田利雄)なんて数か月間やってて、半年以上ロードショーやってたんじゃないかなぁ。

大賀 今三留さんが挙げられた『ノストラダムスの大予言』も、僕が挙げた『戦国自衛隊』も「70年代の日本映画」なんですけど。三留さんは前半で「あのころ邦画は不良だった」という表現をしたのだけれども、僕の眼からは70年代の邦画はある種のパラダイムに陥っていて、東映はヤクザ映画しか作らないし、松竹は『寅さん』しか作らないし、東宝の『ゴジラ』も『無責任男』も『若大将』も時代に取り残されて終わっちゃったし……。

三留 だから、メジャーがそんな感じでしょ。にっかつはロマンポルノに行って、後はATGがあって……。

大賀 そんな中に、ブレイクスルー的に角川映画というのが出てきた。それは僕より少し上の世代の三留さんから見た時にどうだったんでしょうか。

三留 ねぇ……あれはやっぱり、すっごい大きな「事件」だったよね。『犬神家の一族』(1976年 監督:市川崑)はね、日比谷映画で観ているんですよ、一番手前が日比谷映画。そしてなまこ壁の有楽座。でみゆき座、日比谷スカラ座。で、向こう側に東京宝塚みたいなね。で、観に行ったんだけど、それより先にインパクトあったのは、あの「湖から両足が突き出ている」スチルが表紙の、横溝正史の(『犬神家の一族』の)文庫本! ……っていうのが本屋で並んでてさァ、一冊一冊、怖くってさァ……(笑)

犬神家の一族

大賀 あはははは。

三留 で、学校帰りに神楽坂の文悠っていう書店に寄って、(横溝正史文庫を)買うんだけどさァ……私は(江戸川乱歩ファンなんで(笑) 横溝正史はダメなんだよぉ!

大賀 えぇ!? 「そこ」!? そこがこだわり!?

三留 だから読めないの。なんだろう、横溝正史は乱歩みたいにいかがわしくないんだと思う。

次回は「三留まゆみ×市川大賀 第五夜「三留まゆみと大林宜彦と」」

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事