前回は「三留まゆみ×市川大賀 第五夜「三留まゆみと大林宜彦と」」
大賀 角川春樹のすごいところっていうのは、例えば『君よ憤怒の河を渡れ』(1976年)という映画があって、そこで大映の永田ラッパが集めた佐藤純彌監督、高倉健主演、中野良子ヒロインっていうトリオをグロスでぶっこ抜き、そこに、森村誠一氏の『野性の証明』(1978年)を撮らせた。一方で当時カリスマ性を高めていた松田優作の主演低予算映画『最も危険な遊戯』(1978年)の村川透監督、永原秀一脚本、仙元誠三キャメラマンと、優作映画ユニットそのままに起用して、大藪晴彦文学を与えて『蘇える金狼』(1979年)をすぐ翌年に撮らせた。また、千葉真一、深作欣二、真田広之、志穂美悦子、矢島信男といった『宇宙からのメッセージ』(1978年)のメンツに、薬師丸ひろ子を主役に加えて、やはり八犬伝モチーフで『里見八犬伝』(1983年)を撮らせた。そこでの角川氏の「才能と力量はあるのだけれど、バジェットに恵まれてない映画屋たちに、自社の原作と億の金を渡して天下一品の映画を作らせる」というシンデレラストーリーのような手法というのは、とても邦画界全体に対する挑戦状でもあり、カンフル剤でもあったと思うんです。