三留 で、さっき話した、文芸坐のイベントをやった後、みんなで飲みに行ったときに、ゴジさんがまだ出たばかりのiPhoneを取り出して「Twitterってなんだ? Twitterって!」とか言い出した(笑) で若い子たちみんなに教えてもらって「お、おう、Twitter……Tweet……つまり“さえずる”か!」とか言ったりして。さすが東大!(笑)

大賀 さすが東大(笑)

三留 でTwitterを覚えて、動画をアップすることも覚えて、その挙句に見せてくれたのが「どうだ、『うちの階段で踊る、室井滋』だ」っていう(笑)

大賀 バリューあるのかないのか、全くつかみとれない動画!(笑)

三留 その(打ち上げの)ときも、室井さんが絶妙なタイミングで顔を出して、みんなに「この人(長谷川監督)さぁ、飲み始めると食べないんだ。だから、食べさせてやってね!」って。また室井さんがかっこいいのは、「私、ちょっと覚えなきゃいけない台詞があるから」って言って、「その辺の喫茶店へ行って勉強してくる」って去っていったのに、(打ち上げが)お会計の時に現れて、全員の代金を払ってくれた……。で、ゴジさんが室井さんに「おう、紹介するぜ! これが三留でな!」とか言うんだけど、「私たち昔っから知り合いだもんね」って室井さんに言われて(笑) ゴジさんが「そうだったのかぁ!」ってすごい悔しそうだった(笑)

大賀 僕もゴジさんの新作は観たいんだけれども、現代ではここ20年ですっかり、監督がリスクを負う時代になっちゃったじゃないですか。昔はプロデューサーが全部リスクを背負って「お前(監督)は好きなことをやれ。だが予算はこんだけしかねぇぞ」と。だからそういう現場からは企画書からは想像も出来ない傑作もずいぶん生まれた。

三留 そう。そういう意味でのプロデューサーがいなくなっちゃったんだよね。ホン(脚本)を読めるプロデューサー、監督に物が言えるプロデューサーがいなくなっちゃった。

大賀 こうして往年の名画や名監督の話をしていて思うのは、昨今、やれリメイクだ、やれ何十年越しの続編だ、何十年前の伝説の漫画の実写映画化だ、で、映画やテレビ、漫画やアニメもそうなんだけど、現代の娯楽全体がすごく、僕や三留さんの時代の遺産で食っているんだっていう空気を、すごく嫌な手ごたえと共に感じるんですよね。新しい物が創造出来ない時代に入りこんじゃっているのではないかと。

三留 それはまず、ハリウッド映画がリメイクばっかりだっていうことの影響もあるよね。それも韓国映画のリメイクであったりとか、それまでは考えられなかった企画が簡単にとおるようになっちゃった。

大賀 日本の映画も、『リング』(1998年 監督: 中田秀夫)なんかは、韓国やハリウッドでまでもリメイクされたしね。

リング

三留 そう。だから映画って枯渇しちゃうのかな、物語って枯渇しちゃうのかなって思った。だけど、そういうことすらも、今はもう感じなくなっちゃってるよね。当たり前のようにリメイクされ続けちゃって……。でもその一方で『スリー・ビルボード』(2017年 監督: Martin McDonagh 原題: Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)みたいな映画が出て来ちゃうとね、やっぱハリウッドすごいなって、思っちゃうけどね。

大賀 日本だと、僕がまだ期待したいのは、一瀬隆重)さんなんですよね。一瀬さんは僕や三留さんも懇意の、手塚眞監督の『星くず兄弟の伝説』(1984年)でプロデューサーデビューしたあと、まだ映画界がバブル絶頂期だった1988年に、既に邦画界では伝説の人になっていた実相寺昭雄監督を大抜擢して、邦画史上に残る大バジェット映画『帝都物語』のエグゼクティブプロデューサーに就任。その後も今さっき話題に出た『リング』や『らせん』(1998年 監督:中田秀夫)などでジャパニーズ・ホラー現象を仕掛けて成功したり、僕的には一瀬さんは、日本の映画プロデューサーとしては、角川春樹、奥山和由を越える、発想と実行力と、力量を持った人物だと思ってます。

三留 あぁ一瀬さんね。うんうん。

次回は「三留まゆみ×市川大賀 第九夜「三留まゆみと僕らの時代のアオイホノオと」」

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