ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、メカ単位での紹介をする大好評連載。

ガンダムMK-ⅡとGディフェンサーが合体した「スーパーガンダム」と、パイロットのエマ・シーン中尉

 

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、 再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。
今回紹介するのは、『機動戦士Zガンダム』(1985年)初期に主役メカを務めて、続く『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)ラストまで活躍する、ガンダムMK-Ⅱの」初代HGUCを、商品バリエーション含めて紹介していきます!

ガンダムMk-Ⅱ ティターンズカラー 1/144 HGUC 030 2002年5月 1000円

初の「ガンダムMK-ⅡのHGUC」は「黒いガンダム」だった!

「そうきたか!」満を持しての「テレビアニメ版史上初の正規2号機ガンダム」のHGUC発売を待ちに待っていたガンプラファンは、まず、半ばなるほどと納得させられる思いで、この第一報を受け取った。
2002年。HGUCも30番台を迎え、ギャンやザクⅢのようなレアマイナーな枠だけではなく、『機動戦士ガンダム』(1979年)主役のV作戦トリオも揃い立った。傍流のOVA版の主役ガンダム等もキット化され、そろそろ「HGUCフォーマットでの、ガンダムタイプのモビル・スーツの設計セオリー」が完成してきた頃合いでもあった。

『Zガンダム』登場モビル・スーツのHGUC化も、百式、キュベレイ、リック・ディアス、ハイザックと、座は充分に温まりつつある中で、決して失敗が許されない「ガンダムMK-ⅡのHGUC」の発売がとうとう発表された。
元々、ガンダムMK-Ⅱは、あのドムと匹敵するぐらい、過去のガンプラでハズレがなかった機体でもある。放映時の旧1/144や旧1/100、初代HGでも、むしろZガンダムやRX-78ガンダムよりも完成度は安定していた。
一つにはそれは、1stガンダムよりもフレームや装甲に、実在メカとしての気分を抱かせつつも、Zガンダムのような「二次元の嘘ホラ吹き男爵」にまではなってないという、絶妙のリアリズムが、立体化による破綻の少なさを呼び込んでいたのかもしれなかったが、それこそ旧1/144キット時代から、キット単位でファンがそれぞれに多く、歴代主役ガンダムの中でも、オールタイムベストを選ぶのが難しいキットとも言える。

その法則は、このキットの後でも続くのだが、この時点でファンが「そうきたか!」と唸ったのは「まずは『ティターンズカラー版』での発売から」という戦略に対してであった。

先行して発売された、ティターンズカラーのガンダムMK-Ⅱ

『Zガンダム』を見た人であれば、この「ティターンズカラー版ガンダムMK-Ⅱ」の意味は分かるだろう。第1話『黒いガンダム』というタイトルが象徴しているように、かつては地球を救った純白の正義のロボット、ガンダムが、悪の手先の漆黒の最新鋭メカとして画面に姿を現す、しかもシャアの目前にドアップで。これが『Zガンダム』最初の映像トリックであったことは、『Zガンダム』を見た人には常識なわけで。

初めて視聴者の前に現れた「黒いガンダム」の顔のアップ

しかし、ガンダムMK-Ⅱは、序盤の主人公メカでもあるので、早々とこの「黒いガンダム」は画面からは退場。第1話でシャアやカミーユがエゥーゴに持ち帰って、白く、いわゆる「ガンダムカラー」に塗り分けられて、改めて活躍するというところまでワンセットなので、実質このティターンズカラーのガンダムMK-Ⅱは、さしたる出番も活躍もなく、ただ「新作ガンダムの最初の続編で、初めて画面に登場したガンダムが黒かった」を印象付けるだけの小道具に過ぎなかったわけだ。

 HGUC ガンダムMK-Ⅱ ティターンズカラー版のサイドビューとバックビュー

だが、それゆえに、だからこそ、ガンダムMK-Ⅱといえばこの色、というコアなファンもいるのも当然で、逆を言えばこの時期であれば、ガンダムMK-Ⅱを通常カラーで発売したとしても、どうせバリエーション商品か限定商品で、ティターンズカラー版も出すでしょうというガンプラファンの読みを、まさに逆手に取ったのが、このHGUC 030 ガンダムMK-Ⅱティターンズカラー版であった。

その後発売された、エゥーゴカラー版との比較。白基調と黒基調でがらっと印象が変わる

確かに、先にエゥーゴ版を出してしまえば、その後にいかにバリューを付けようとも、ティターンズ版を買おうという人は好事家の一部だけであろうし、フライングアーマーやGディフェンサーはエゥーゴ製なので、ティターンズ版とセットにするのは商売的にも設定的にも無理がある。

劇中再現より。コロニーの中を、シャアたちの迎撃に飛ぶ、黒いガンダム!

だからだろう、なにせガンダムMK-Ⅱは、『機動戦士Zガンダム』開始から『機動戦士ガンダムZZ』終了までの丸々2年間、ほぼレギュラーで主役級のメカ扱いだった超メジャー級ガンダムなのだから、このままエゥーゴ版も、待っていれば発売されると誰もが信じていた。
「ガンダムカラーで2年間活躍し続けたガンダムが、肝心のガンダムカラーで単独発売されない」等とは、夢にも思わなかったのである。
確かに今の時代はガンプラ(というかバンダイ界隈)では「プレバン送り」という言葉もあって、需要はそんなに見込めないが、既存の金型の流用や多少の付属パーツで、劇中のバリエーションやニッチメカを商品化して、それをバンダイの通販専門部署の、プレミアムバンダイでのみ発売するという商法だ。
多少高値になることが多いが、これが90年代までのB-CLUB製ガレージキットと同じように、ニッチ層を救ってきたのも事実であった。

しかし、物はガンダムMK-Ⅱだ。
初の続編新作ガンダムの初期主役を張ったガンダムをプレバン送りにするほど、バンダイは向こう見ずな企業ではないはずだ。
かといって、単純に「ティターンズ版の次はエゥーゴ版で」と、色替えだけで発売し直しても、主役ガンダムに相応しい数字が弾き出せるとは限らない。
バンダイの、そうした迷彩商法を知っているユーザーの多くは、既にティターンズ版を複数買いして、自前で白く塗りなおして、エゥーゴ版にして完成させておくようにもなっていた。

キレてガンダムに乗り込んだカミーユが、自分を拷問したティターンズ士官に向けてバルカンを放つ。かつてのアムロ同様の民間人少年ガンダムパイロット誕生の瞬間

その後の顛末の方に関しては次以降のキットの解説に譲るとして、まずはこのキット単体の評価を記していきたいと思う。
このキットは、今の目で見てこそ「目立つ箇所に合わせ目が多い」「関節の可動範囲が優秀ではない」というマイナス評価が与えられてしまうが、それはこのHGUCというシリーズ自体が、2010年代以降急激に進化を遂げて、ダウンサイジング版MGともいうべき仕様を兼ね備えてしまうようになってしまった時代の価値基準であって、そもそもスタート時点でのHGUCは「あくまでアニメ設定を基準としつつ」「可動やギミックなどで、二次元の嘘をカバーする新設定を取り入れて」「1/100のMGが高額の実機主義だとしたら、HGUCは廉価版のアニメ主義でいこう」というのがあったことはこれまでにも述べてきた。

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