ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、メカ単位での紹介をする大好評連載。
そう、この連載は、かつて2017年から、コラムサイト『MiddleEdge』で連載されていたガンプラレビューコラムであった。それが、MiddleEdge全体の方針転換と共に連載は終了。3年近くの時を経て、今ここに、自サイトでよみがえったのである!
MiddleEdge時代は『機動戦士ガンダム』(1979年)のガンプラから始まって、『機動戦士Zガンダム』(1985年)『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)の途中まで、『伝説巨神イデオン』(1980年)や『無敵超人ザンボット3』(1977年)等の、非ガンダム系のプラモを、時代を超えて紹介してまいりましたが、ここから再開して続く連載でも、『ガンダムZZ』以降から、『ガンダム Gのレコンギスタ』(2014年)を踏まえて、富野ロボットアニメ最新作に至るまで、旧キットから最新のHGUCまで、商品の発売順に、再現画像と共に網羅紹介していこうという趣向になっております!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、 再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。
今回紹介するのは、『ガンダムZZ』初動でグレミー・トトの愛機だったバウのHGUC版です!

バウ 1/144 HGUC 015 2000年9月 1200円(機動戦士ガンダムZZ)

今回紹介するモビル・スーツ、バウは、『ガンダムZZ』15話より、(当初は)世間知らずの御坊っちゃんキャラだったグレミー・トトの専用機として登場したが、なにせパイロットの性格設定が「そういう風味」なものだから、今一歩戦闘シーンで機体デザインや変形を活かした戦法をとることもできないまま、シリーズクライマックスでネオジオンが分裂した時には、グリーンに塗られた量産型バウが登場しているが、こちらもあまり活躍したとは言い難かった。
ちなみにその、グリーンの量産型バウは、キットの成型色だけ変えればいいだけなので、HGUCでも2年後の2002年9月に一般発売されている。

この、バウというモビル・スーツは、あくまでネオジオンの兵器でありながらも、あからさまに連邦のゼータガンダムとガンダムZZのデザインのよいとこ取りで見栄えが成り立っていて、それは当時の(本シリーズ初動殆どのメカデザインを手掛けた)出渕裕氏の本領発揮ともいえる「オマージュ方式」とも言えた。
出渕氏は、このバウでゼータガンダムを自分なりにリファインし、後のνガンダムやNT-1アレックス等でRX-78ガンダムをリファインさせた、ある意味メカデザイナー界隈のリファイン職人としての腕も一流である。

『ガンダムZZ』初動は、敵ネオジオンのパイロットとモビル・スーツの組み合わせが何とも言えない妙味を醸し出している演出が目立ち、「優男の騎士」キャラと「男勝りの女盛り」キャラがいるのに、前者に「まるで全身が花束のような花弁形のスラスターの積層でデザイニングされた、ハンマ・ハンマ」を与え、後者に「かつてのジオンのギャンをモチーフにした、騎士専用モビル・スーツ、R・ジャジャ」を与えてギャップを画にした。

その独特のギャップ演出はその後も続き「ネオジオンの総帥として、ティターンズとエゥーゴを恐れさせた純白の機体を、漆黒に塗り替えただけのキュベレイ」に、元気はつらつロリっ子パイロットを乗せてみたり、このバウもそういう意味では、上でも書いたように、御坊っちゃん気質で世間知らずで新兵のグレミーが、いきなり「ネオジオン版ゼータガンダム」に乗り込んでしまう辺りも、狙ったギャップなのかもしれなかった。

イマドキ、この機体関係の資料を漁ると、いかにもな後付けとして「本機は、アナハイム・エレクトロニクス社の『Z計画』に携わっていた、旧公国系の技術者が開発を主導したとも言われており」等といった解説が散見されるが、メタ的なことを言ってしまえば「敵側にゼータガンダムそっくりのモビル・スーツがいたら面白い。ガンダムの角や目等、顔さえ似せなければ別物に見えるはず」というメタ的な理由以外に深い事情なんてものはなかったと思われる。
この「敵側にゼータガンダムのパロディ機を出そう」が出渕氏のアイディアなのか、富野監督のアイディアなのか、分からずじまいではあるが、ファン心理としては「出渕氏のブラッシュアップ版ゼータガンダムが見れた」ことだけでも嬉しかったのを思い出す。

また、このモビル・スーツのアーリーデザイン時の仮名として、正式デザイン版のフロントスカートに、ガンダム世界では珍しく漢字で書かれた「龍飛」は、同名のロボットが往年の名作特撮ドラマ『スーパーロボット レッドバロン』(1973年)に登場した、日本代表のロボットの名前「飛龍」から取られているという逸話はこれも有名。

また、バウは上半身(バウ・アタッカー)と下半身(バウ・ナッター)が分離してそれぞれ飛行形態に変形するが、敵対する連邦のZZガンダムとは違い、バウ・ナッターはバウ・アタッカーから遠隔操作して飛行するシステムであり、この図式は後の『機動戦士Vガンダム』(1993年)での敵組織、ベスパのモビル・スーツ、ゾロにコンセプトは受け継がれた。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事