(今回のインタビュー発表に伴う、様々な影響を考慮して、今回以降、人物名を一部伏字として処理しております)

前回は「安藤達己インタビュー 第三夜「安藤達己と上原正三と実相寺昭雄と」」

『怪奇大作戦』『氷の死刑台』テロップ

――自分も以前、仕事で、簡単な映像理論の解説をしたんですが、観る側はそんな理論知らなくていい。むしろ知らないほうが気楽に観れる。でも、作る側は全てのカット、画面を、精密機械のごとくしっかりと、映像理論の基本を守って構築しなければいけない。僕はやっぱりそう思うんです。

安藤 そのとおり。そりゃ『主観』『客観』っていうのは、分かる人が分かってるわけで、観てる人はそんなことわかんなくてもいいんですよ(笑) 何にも知らない人を、その不自然な世界に引っ張っていけるかっていうのは、カット割りの妙味が必要になってくるわけですよね。だからね、カットバックしか知らない△△監督にそんなことできないよっていう(爆笑)

――(笑)(何も言えない)

安藤 そういうことなんですよ(笑) 妙な事を言えば、飯島(敏宏)さんなんかはよく知っているんだけど、要するに、シナリオ段階では『ここは辻褄が合わないだろう』っていうのがあっても、映像的に、そこの辻褄を合わせて見せるのが演出家の手腕でもあるんですよ。理性的に考えてみると、辻褄合ってないじゃない?っていう(笑) だからそういうテクニックも、やっぱ知ってなくちゃいけないんですよね、監督っちゅうのは。

――△△監督作品なんか観てると、撮ってる本人が楽しんでいるのは伝わってくるんですけど、こっちは全然その楽しみにのれないっていう(笑)

安藤 そりゃ□□のなんか観たらもっと凄いよ(笑) 『ファイヤーマン』(1973年円谷プロ)なんか、お前もう辞めろよって言いたくなるような(爆笑) 僕はもう同じシリーズやってて嫌んなっちゃったよ。お前、楽しむのはいいよ? それはそれで。だけど、お前一人でこのシリーズ撮ってるんじゃねぇぞって(笑) 冗談じゃないよ、お前と一緒にやれないよって感じだよね(笑) もう呆れけぇっちゃったよ『ファイヤーマン』一緒にやってて(笑) その辺がやっぱり、ドラマを本当に分かってる人と分かってない人と歴然と違うんだよ、本当にね。

『ファイヤーマン』(1973年)

――やはり今になって観返してみると、特撮プロの経験しかない人間が、無勉強の見よう見まねで撮った作品よりも、やっぱり本編の基礎や映像理論の勉強が出来てる人が、苦労して特撮のなんたるかを勉強して撮った作品の方が、当然、完成作品においてはクオリティが高いですね。

安藤 そりゃそうですよ、話にならない。もうね、特撮から来た人達には任せてらんないって。もう観なくていい、観なくても分かってるから(笑) もういいよって感じだよ。そういうのがね、『ファイヤーマン』でメイン監督として入ってきて、やってらんねぇぞ俺は、ってのがね、思うよ。

――自分の子ども時代を思い返して思うのは、ウルトラマンと怪獣の戦いだけ観たいのだったら『ウルトラファイト』(1970年)とかを観てればいいわけなんですよ。でもじゃあ、なんでウルトラマンが出てくるまでの20分を食い入るように観てるのかというと、それはやっぱり、子どもの中に、その20分を観る価値がちゃんとあるからなんですよね。それを、本編(ドラマ部分)監督には、誇りに思っていただきたいという……。

安藤 その通り。僕はほらドラマから来たからさ、特撮のことなんか全く考えてなかったしさ。

――安藤監督はデビュー作では上原正三脚本でしたが、その後の作品では若槻文三氏や藤川桂介氏などとよく組まれてました。そういった方々とともに、70年代はウルトラではなく、円谷でも傍流作品が多くなってしまいましたね、橋本洋二(当時TBSプロデューサー)氏の意向ですか?

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