――自分も『Zガンダム』は10代の終わりに観たわけですけど、いわゆる「ザク」と「ジム」が両方とも連邦軍に所属していて、しかも味方になったり敵になったり、当時は混乱してました。

出渕 ね、ネモとかこっち(エゥーゴ)だし、かと思えばジムⅢを連邦軍が使ってたりだとか。

――当時から不思議だったのですが、あのモビルスーツデザインの錯綜は、富野さんは狙ってやってたのでしょうか? それともアンコントロール状態だったのでしょうか。

出渕 それは富野さんに聞いてもらわないと分からないですけど(笑) キャラクターにしてもモビルスーツにしても、ちょっと(作品に)出して、「あ、やっぱりいらなかったから、もう死ね」とかね。それが富野イズム(笑)。壊すとかね。もう、ものすごい、消費率が高いというか、キャラも大事に計算して演出してるっていうよりも、とりあえず出してみたら「あぁーこれ失敗だったなァ」みたいな。モビルスーツも本当にインフレ起こしてて、昔の『ガンダム』でよかったのは、量産機って概念があって、同じ機体がたくさんでてくるっていうのがあったんですけど、『Zガンダム』では、ワンオフの、誰それが乗ってるっていうのがどんどん出始めちゃって。ボリノーク・サマーンとか、どうしてくれようとか思いましたものね(笑) バイアランとかメッサーラは良いと思うんですけど。後は……(ため息)。あ、キュベレイは良いデザインだと思いますよ。

――永野護さんのですね。

出渕 永野君ね。でもね、僕ね、「青いイカデビル」が好きじゃないんですよね(笑)

――永野さんのハンブラビですね。富野監督も後に「永野君はああいうもの(ハンブラビ)をデザインしているうちは、まだまだ」みたいなことを仰っていましたね。

青いイカデビル……ではなく、永野護氏デザインのハンブラビ

出渕 あれって『鉄人28号』のモンスターだよね、顔。クリスの遊び心(笑)

――あの時期「モノアイ付ければ全部モビルスーツに見えるだろう」という印象が、すごく雑に感じられましたね。

出渕 だから『ガンダムZZ』の時は、『ガンダム』のころのデザインに寄せた記憶はあります。ガルスJと、R・ジャジャと、ハンマ・ハンマと、バウと、ガ・ゾウム、カプールだっけかな。

――明貴美加さん達がクリーンナップをなさってたんですっけ。

出渕 伸童舎で請けてたんですよ。伸童舎で岡本(英郎)君と藤田(一己)君と(明貴)美加ちゃんとでやっていて、あとフリーで佐山(善則)君もやっていて。ガルスJとバウを、最初岡本君がやっていて、「さすがに違う」って言って、「顔だけ修正させて」って言って。バウが来た時には「違う。これだけは俺がやるわ」ってクリーンナップまで自分でやることになったんです。あと、ズサを藤田君がやったんですよ。カプールとドライセンを佐山君がやって。「これはどっちもいいじゃない?」って。R・ジャジャを最初明貴君がやって、また本人が嬉しそうに見せにくるんですよ(笑) 僕が一目見て「ダメじゃんこれ!これはギャンの後継機なの」って言って(笑) 持ってる武器含めてちょっとな〜だけど、直している暇がないからこれでいいけど、ダメだよこれってちゃんと言って(笑) だからR・ジャジャは僕は全然納得していないっていう(笑) 「馬鹿かお前ら! ちゃごちゃ付けやがって」っていうね。

『機動戦士ガンダムZZ』で出渕氏がフィニッシュまで手掛けたバウ

――そうすると出渕さんは、『ガンダムZZ』に関してはかなり最後の方までつきっきりだったわけですか?

出渕 つきっきりってわけじゃないですね。(スタジオの)中に入ってやってるわけじゃないですから。一応(上がってくるデザインを)見せてもらって、チェックはさせてもらってました。だから、藤田君と佐山君のは良いけど、岡本君のは回収して、ガルスJをちょっと顔だけこっちで描きなおしたりとか、バウも全面的に描きなおして、R・ジャジャは間に合わないからもういいけど(笑) 案の定美加ちゃんは、後半、Zな時の恐竜みたいなの描き始めちゃって、当時のアマチュアな流行りなのかもしれないんですけど、ポイントよくわかんなくなるんですよ、あれ(笑) なんだっけ、ドーベンウルフかな。当時ホラ「僕の考えたモビルスーツ」みたいなのが流行ってて、そういうのがファンメイドであったらしく、そういうのも含めて時代性だったのかなあ。

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