――そうやって、メカデザイナーさん同士、横の繋がりとかプライベートのお付き合いとか結構あるんですか?

出渕 しますよ。柳瀬君もそうだし。佐山君とか他のデザイナーとか、意外とメカデザイナーの子達は仲良くやっていますよね。カトキ君とも『WXIII 機動警察パトレイバー』(2001年)の時も「陸上自衛隊関係(のデザイン)やってみない?」とかね。「カトキ版近未来陸自を作って欲しいんだけど」「あぁやりまーす」と。他には、海自の水中型レイバーとかやってもらったりとかしたんです。あと「本当はコンテやりたいんでしょ?(笑) やりたいんでしょ? 部分的にやらない?」って言ったら「あぁやります、やります!」っていう流れがありました。で(カトキ氏は)今は大友克洋さんの映画(2013年のオムニバス映画『SHORT PEACE』)の監督(その中の一本『武器よさらば』)もやってるし。

――「メカデザイナーから監督になる」という意味では、やはり出渕さんも『ラーゼフォン』(2002年)『宇宙戦艦ヤマト2199』(2012年)と、監督を経験されて、富野監督と同じ立ち位置に立ってらして、なにか見え方は変わりましたか?

出渕氏が監督を務めた『 宇宙戦艦ヤマト2199 』

出渕 うーん……。変わりますよね、やっぱり。人をまとめていくっていうか。監督ってそっちの方が……、まぁ富野さん的なやり方はできませんけど、っていうか、したらヤバイと(笑) 今はコンプライス的にヤバイですから(爆) あと、僕は性格的に「それ」出来ないんで(笑) だから、ボンズで『ラーゼフォン』やってるときに「出渕さん、富野さんタイプかと思ったら、(高橋)良輔さんタイプですね」って言われて「あ、う、うーん……そうかも(笑)」って。富野さんと良輔さんも面白い関係で、富野さん、良輔さんを先輩だと思ってたんですよ。実際、良輔さんは虫プロでは富野さんの先輩ではあるんですよ。ちょっとだけね。でも、年齢は富野さんの方が三つ上だったんですよ。十年ぐらい前かな、初めて富野さんがそのことを知って。「えぇっ!? 良ちゃん僕より年下だったの!? 今まで年上だと思って接していたのに!」

――人一倍、年功序列に厳しい人が(笑)

出渕 そうそうそう(笑) 「えーっ!」「でも富ちゃん、そんなの知ってるでしょう?」「知らなかったわ! 良輔! お前は!」みたいな(笑) なんかね(富野さんが)可愛らしいなぁと思いました。良輔さんはね、要するに“人たらし”なんですよ。富野さんは、作監なんかをチェックしても、ホッチキスかなんかで止めてバーッと見て、コンテなんかも全部見て直さないと気が済まない。せっかちで、全部目が届いて、そういう意味では全体を監督している完璧主義ってタイプなんですよ。ところが良輔さんは、人に任せるんですよ。各パートごとに。「これ、いいじゃん〇〇ちゃん。うん、これいいと思うよ」って。ただし、締めるところは締めるんですよね。昔『ラーゼフォン』をやるときに、初めての監督だったんで、良輔さんに「監督をやる時に、どこに気を付けたらいいか」っていう心構えを聞きに行ったんですよ。返ってきた答え、なんだと思います?

――いや、想像もつきませんです。

出渕 「出渕君ね。監督はね。良い予告編が書ければそれでいいんだよ」「は?」「いやホントだよ? 予告編で良い物を込めれば、ちゃんとそれが出来れば、そんなに難しいことじゃないんだよ」って。

――マジですか(笑)

出渕 でも、一応その教えは守ってて。『ラーゼフォン』のときも『ヤマト2199』のときも、予告編は全部自分で書いているんですよ。やってて分かったんですが、予告編って言ってみれば、次回は何をやる、こういう話だっていうものを、端的に、簡潔に、そして人に「こういう風に見せたいんだ」っていうのを凝縮させた物じゃないですか。なるほどじゃあそれが書けるってことは、自分でそれを捕まえてるってことだから、捕まえてるから書けるってことなんだなっていう解釈をしたんですよ。いやぁ、本当にね(高橋監督は)いいオヤジなんですよ。富野さんとは違うベクトルで可愛い(笑) 富野さんはセンシティブで、良輔さんは「いいんじゃなーい?」ってヌルっとしているっていう(笑) まぁでも、あの二人が両輪だったから、あのころのサンライズは良かったんです。(高橋良輔監督の)『装甲騎兵ボトムズ』(1983年)の予告編なんて秀逸じゃないですか。それはそうだよなぁと思って。そういえば、初めて『ダンバイン』の打ち合わせに、宮武さんからバトンタッチして参加した時に、富野さんから「出渕君! ちょっと出渕君! 見て欲しいものがあるんだ」「なんですか」「これなんだけど」って出されたのがスコープドッグ(『ボトムズ』の主人公メカ)の設定。ちょうど(『ダンバイン』と『ボトムズ』が)同じ時期だったんですよね。放映前でしたけど、設定を見せてもらって、あぁ大河原さんと良輔さんの新作なんですねってリアクションしたら「これはね、出渕君。『悪い例』だからね? 『悪い例』として、今君に見せているんだからね! こういうの描いちゃダメなんだから!」って言われて(笑) 「はぁ……」って答えて。どう考えても「こっち」には行かねぇだろ「この世界(バイストン・ウェル)」って思って(笑)

次回「出渕裕ロングインタビュー8 出渕裕と「可愛い富野由悠季」と『オーラバトラー戦記』と」

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