前回は「出渕裕ロングインタビュー6 出渕裕と逆襲のシャアとサザビーと」

――小説版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』のナイチンゲールは、どの段階で発想されたんですか?

出渕氏がデザインした頃のナイチンゲール

出渕 あの時、小説が二本あったんですよ。『機動戦士ガンダム ハイ・ストリーマー』徳間書店)っていうのと、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』(角川書店)があって、本来だったら『逆襲のシャア』の方でサザビーが出るのかと思ったら、サザビーという名のモビルスーツは『ハイ・ストリーマー』の方で、『逆襲のシャアの方はナイチンゲールなんだけど、チェーン・アギは『ハイ・ストリーマー』には出てくるんだけど、『逆襲のシャア』には出ていなくて、代わりにベルトーチカがアムロとくっついているという。だからパラレルなんですよ。どっちも公式じゃないですか。それでそっち(角川版)の挿絵を描くってことになった時、ナイチンゲールっていうのが、要はサザビーなんだろうけれど、名前が違うから別物じゃないですか。それでどうしようかって思って、サザビーをモビルアーマーっぽくしたのがナイチンゲールで、νガンダムをマッシブにして、後に別機体として設定し直したのがHi-νガンダムなんです。口絵で描いて、時間がなかったんでバーッと描いちゃったんですけど、そうしたら『B-CLUB』安井(ひさし)さんから「アレちゃんと描きませんか?」って言われて一枚描いたんです。その後海洋堂だったっけかな。商品化したいっていうんで、背面が分からないっていうんで、背面のラフを描いたりしたんですよね。そしたらサンライズが、一回(デザインを)買い取りたいと。バンダイで商品化する時に、権利問題がややこしくならないように、予め権利を一本化しておきたいというのがあって、僕の方は(権利を)放棄するって形なんですけど、それはいいですよって言ったんです。新たに商品化されたHi-νガンダムになって、ナイチンゲールも「多分、今やると違うんですけどそれでもいいですか?」と聞いたんです。まぁ結局忙しくて手が付けられなくなってたら、『逆襲のシャア』の漫画を『ガンダムエース』角川書店)でやるんで、それにデザインの方を提供しなくちゃならないので、代わりに柳瀬(敬之)君がやって、それでいいですかって話が来て。ああ、柳瀬くんなら、じゃあそれでってことになりました。柳瀬君はいろいろと紹介したりしたんで。彼、以前はゲーム会社の方にいて、そこでいろいろデザインやっていて、本人も以前は自分のホームページなんかでガンダムとか描いてたんですけれども、ある時、お晴(美樹本晴彦氏)が漫画描いてる時に、お晴はメカそんな得意じゃないから、「メカ描ける人(が欲しい)」って言ってきたんです。それで柳瀬君が(メカ作画アシスタントとして)入ったんですよ。そしたらお晴から電話がきて、「出渕さん、今手伝ってくれる子(柳瀬氏)がメカデザインやりたいって言ってるんだけど、見てやってくれない?」って言ってきて「いいよ」って言って。会ってファイルを見て、あぁ上手いなぁと思って「君さぁ。カトキ君と佐山さん好きでしょ」って話して(笑) で、ファイルを預かって、『交響詩篇エウレカセブン』(2005年)の時にボンズを紹介したりとか、あと、『機動戦士ガンダム MS IGLOO』(2006年)の時にちょっと手伝ってもらったりしてたんです。その流れでサンライズとも繋がるようになったんで、ガンダムの方もやるようになったんです。で、公式の方でガンダムをやるってことになったら、自分のホームページの方は閉じて。今はもう売れっ子になって、海老川(兼武)君と一緒にやってますからね。だから、そういう意味では、柳瀬君も可愛がってた後輩の一人ってことでいいんじゃないの。上手いしっていう。でもね、柳瀬くーん、君がガンダムとかそういうのをやり始めた時、カトキがカリカリしてたんですよ、本当にね(笑) だからぁ、君(カトキ氏)が真似をされるようになって、やっと一人前だと思えばいいのに、「なんか、俺的なモノが(他者から)出てきた」みたいな。それでまた石垣(純哉)君なんかもカリカリしてるし。お前らも大人になれ!(笑) あ……でも、今は柳瀬君とか石垣君とかは仲良く一緒にやってますよ。

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