出渕 ただ、『逆襲のシャア』のころ、富野さん可愛いなと思ったのは、急に話振られて(デザイン仕事を)やんなきゃいけないから、サンライズのスタジオに籠って(仕事を)やってたんですよ。で、有名なシーンなんですけど、クェスがヤクト・ドーガから、私服のまま宇宙空間に飛び出て、サザビーのシャアのところにいくでしょ? そのシーンのコンテ見つけて「えっ!?」って思って。で、演出・監督の部屋に行ってノックして、「なに?」「このコンテなんですけどぉ。コレ、おかしいんじゃないでしょうか?」って。「いいんですか?」って言ったら、「いやっ! いいんだよ! NASAがね、こうして目と口を押えてね。もうね、何秒かはだいじょうぶだって言ってたのよ!」言ってたって誰がだよっていう(笑) でも「温度どうするんですか。無理じゃないですか」って言ったんだけど、まあ監督がそう言うなら仕方ないですから。これはもう「分かりました。富野さん。一応確認で来たんですけれども、富野さんがそれでいいって言うんならいいんですけど、僕はちゃんと、“意見具申”はしましたからね」って言って。で、僕はスタジオに戻って作業をしてたんです。で、夜になって、スタジオにも誰もいなくなって、富野さんも帰るってなったとき、コンコンってドアがノックされて、「あ、はい」ってそっち向いたら、富野さんで「出渕君」「あ、はい」「さっきのなんだけどサ。そんなに気になる?」って聞かれて「気になりますね」って言ったら、『巨人の星』の明子ねえちゃんみたいに、スタジオのドアから半身だけだしてこっち見つめながら「……意地悪」って言って帰っていった(爆) あ、可愛い! この人可愛い! むっちゃ可愛い!(爆) もうねぇ、こういう話になると枚挙にいとまがないという。

――富野監督って、そういう部分の愛嬌で許されてきたキャラクターですよね。

出渕 そうそうそう。今だったらセクハラで訴えられますからね「〇〇ちゃぁあん!」で抱き着いたりとかね。いや、いまでもやってるかもしれませんが(笑)

――『ガンダム Gのレコンギスタ』(2014年)で軌道エレベーターを出すことになって、NHKで「ガンダムの監督が、軌道エレベーターの開発研究の現場を見学する」という番組が組まれたのですが、解説してくれる大林組の研究員の方が、男性の時は仏頂面だったのが、女性の方に交代した途端、にこにこしてたりしましたからね(笑)

『ガンダム Gのレコンギスタ』より

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