出渕 そういえば、富野さんが昔、『オーラバトラー戦記』っていうのを、カドカワノベルズで書いていて、僕が三巻まで画を担当していたんです。で、四巻以降、(イラストが)加藤(洋之)君と後藤(啓介)君になったじゃないですか。あれは『野性時代』(角川書店)に連載していて、イラストも『野性時代』に描いていたんですけれども、加藤君と後藤君とは仲が良かったんですが、二人からある日「出渕さん、なんで降りちゃったんですか?」って連絡もらって。「え? なに?」「いえ。『オーラバトラー戦記』の仕事がうちに来てるんですけど」「え? 僕、何も聞いてないけど? まぁ加藤君、後藤君がやるなら、そっちがいいならそれでいいと思うから、いいんじゃない? 気にすることないよ」って話があったんです。けど、角川からはその後もなんにも言われてなかったんですよ。まぁそれで、切られたんだなと思ってたんです。で、ある時、富野さんとばったり会ったから、「そういえば『オーラバトラー戦記』なんですけど、僕が降ろされちゃったのはどういう経緯なんですか?」って聞いたら、「え!? 角川の編集は、君に何も言ってないの? それはいけない! ちゃんと言えって言ったのに!」っていうから「結局なんでだったんですか」ってもう一回聞いたら「それはね。君が下手だったからだよ」って。ごめんなさい、それ、編集者は(出渕氏には)言えないから!(笑) その瞬間、編集者にすんげぇ同情しましたから。というかね、人のこと言うんだったら、富野さん、もっと小説上手くなった方がいい(笑) その時に「富野さんも、もっと(小説)上手くなりましょう」って言えばよかったなって。今にして思えば。

――確かに富野さんの小説は、個性的過ぎて読みにくいところはありますね。

出渕 というかね。言い回しもそうなんですけどね。小説で擬音はやめようよっていうね。「ズガァアア!」とか「ババァアン!」とか。でも、最近自分が(小説は)下手だと認識したみたいです(笑) 

次回は「出渕裕ロングインタビュー9 出渕裕と「富野由悠季の娘」と「うわべのパブリック」と」

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