『へっぽこ実験アニメーション エクセル♥サーガ』

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アニメ版メインビジュアル

かくして、ここまでのギャグ路線は概ね普遍的であり、それゆえ1999年には、テレビ東京系列で深夜アニメの先駆けとして、『へっぽこ実験アニメーション エクセル♥サーガ』というタイトルでアニメ化されることになった。
しかしそもそも、深夜アニメという代物が、まだまだ黎明期だった時代の作品。
深夜枠は、テレビ局的には「捨て枠」なので、そうなるとその深夜帯で放送されるアニメも「最初から捨て枠コンテンツなのだから」を前面に押し出して、タイトルに『へっぽこ実験アニメーション』という冠を追加。
原作完全無視で、放映第一話から突然、同アニメの監督ワタナベシンイチ氏が劇中登場し「このアニメを好き勝手に実験作品にするためには、まず原作者を殺してこい」とヒロイン・エクセル(演ずるはセーラームーン絶頂期の三石琴乃)に命令し、それを請けたエクセルが原作者暗殺を試みるという前代未聞な始まり方をしたかと思えば、キャラクターと声優だけは原作準拠で揃えたものの、第二話以降の内容の方はもちろん原作そっちのけで、テレビのバラエティや歌番組のパロディをやったり、他作品の露骨なパロディをやったり、とかく痛快なまでになんでもやり放題の無法地帯に突入するも、原作を知らないとパロディの処理の角度が理解できず、原作に入れ込んでいてもその内容は完全無視で物語(など、ほぼないに等しいが)が進行するという、面白いことはこの上なく面白いアニメなのだが、一体どっちを向いて、誰に向けて作っているのかが全く分からないという珍品に仕上がったのだ。
さすが「へっぽこ実験」と謳うだけのことはあるが、こうしてアニメ化までされて、いやがうえにも注目度が上がった辺りで、原作の漫画の方向性が若干変わり始める。

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アニメ第一話。原作者を殺しに派遣されるエクセル
原作での、ギリギリ声優ネタ
そのオチ

具体的には、正義の味方側に、新たに(というか突然番外編をぶち込んできて)「もう一人の、若き天才マッドサイエンティスト(ほんと、みんなこういうの好きだなー)」が登場してきて、アクロス側にも「三人目の美少女幹部」が登場してきた辺りから、ヒロインのエクセルが記憶喪失になってしまう辺り。
ここいらから、毎回のエピソードではしっかりギャグテイストを維持しながらも、いかにもという胡散臭すぎる伏線が散りばめ始められた。
市街安全保障局を率いる博士と、イルパラッツォの間に何かの因縁めいた因果をにおわせ始めたり、エクセルの先端恐怖症を、ことさら強調し始めたり、とにかくこの漫画のキャラの台詞を借りるなら「安い芳香剤よりも分かりやす」く、「これ、大事な伏線ですよー」や「この描写、この作品世界の根幹の謎解きに関係してますよー」が、随所に盛り込まれ始めたのだ。

筆者などからすれば「そういうの、あんま興味ないんで。もうこの漫画は、ヒロインのトークスキルとダイアローグコントロールだけで一流のエンターテイメントになってるんだから、余計なシリアス要素は入れずに、このままギャグで突っ走りましょうよ」という思いが強く、中盤辺りから、イルパラッツォの謎めいた出自や、エクセルを含めた三人のアクロス女子幹部の存在の裏付け、市街安全保障局のアンドロイドの技術背景など、いくらシリアスめいた伏線を散りばめられようとも、第一話からして完全に、ギャグでネタバレしている部分もあるのだから、ハッタリかましたって無駄だろうにと、まだこの辺りではたかをくくっていた。

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