少なくとも、国家、社会、民意、司法はそう判断した。
事件後、1991年には、パソコン用アダルトゲーム『沙織 -美少女達の館-』が発禁処分を受けるなど、徐々にロリコン文化の包囲網は狭まっていった。オタク達は必死に自らの聖域を守ろうと、自主規制を呼びかけ、例えば少女の出てくるアダルトコンテンツでは、二次元イラストや漫画であっても性器描写はしない、モザイクをかける、物語内で実父や実兄との性交渉は避ける、直接的に「高校生」を示唆する「女子高生」という呼び方を撤廃し「女子校生」という呼び方に変える、など、数々の対処法を模索したが、その流れと構図は、まるで70年安保で敗退逃走を余儀なくされた、左派テロリスト達の、末路の足掻きのパロディのようであった。
その状況は近年になっても継続しており、むしろwebとITを得た現代では、よりカルトに、より過激な行動へと走りつつも、社会がなかなかその全貌を伺えないという構図に達してきている。
性的な少女のコンテンツは、パソコンのゲームや漫画を越えて、『週刊わたしのおにいちゃん』(2004年)などといった、立体物のフィギュアにも市場を広げてきた。
フィギュアの世界では、某特撮ヒーロー作品で使用された用語「キャストオフ」という隠語を使って「商品状態では衣服を着ているが、実際にはその衣服パーツを外すことが出来て、簡単に、少女の裸体のフィギュアが手に入る」商法がまかりとおるようになった。
ロリコンオタク男性達は、意識や目的が明確にあって自立している実存女性達を「三次元」と揶揄し、自ら率先して二次元へ逃避することが、自虐ギャグとして有効なのだと錯覚した。普段から「俺の彼女は二次元にいるんだ」等と吹聴し、入れ込んだアイドルや声優にスキャンダルが起きれば「これだから、三次元の女など、信用ならないのだ!」と、怒りをあらわにして嘯くことで、自分達の価値観の崇高性を保ち続けた。
その結果、ロリコンオタク達側が、全ての一般社会通念的価値観に対して排他的になり、自らの歪んだ論調に、同意する者だけでコミューンを作り、互いに肯定しあうことで精神の安定を図るという構図が出来あがってしまった。