マルザン当時のソフビの復刻版エレキング

そんなセブンで、成田亨(当時円谷プロに所属していた前衛芸術家にしてデザイナー)氏の意向を反映してか無視してか、登場してくるメカ達は、アンダーソンメカに張り合わんとする名デザインが並んだが、ただ、そこで登場する(やはりドリルとキャタピラの)地底戦車マグマライザーは、成田氏なりの美学が見えるものの、構造論的には完璧に『サンダーバード』ジェットモグラのエピゴーネンであった。

代替テキスト
マグマライザーの現代のフィギュア
代替テキスト
マグマライザー活躍シーンの再現

しかし、マルザン的にはマグマライザーのプラモデルの売れ行きに、かなり期待感を寄せていたようで、前作『ウルトラマン』のベルシダーが一話限りのメカだったにも拘わらず、マグマライザーは早くも第17話『地底GO!GO!GO!』から、20話、30話、40話、49話と、節目の10話ごとに5回も活躍する姿を見せた。
そこでの地中進撃特撮も、『サンダーバード』に既に勝るとも劣らないレベルの迫力を獲得していた。
ただし、そんな「粋さ」を削いでしまったのが、セブン最終回『史上最大の侵略 後編』だ。
ここでは宇宙人が地球の地下に基地を作り、そこから大量のドリルミサイルで、世界中の都市を破壊するという作戦が企てられるのだが、このシーンよく見ると、宇宙人が攻撃用意に設置したカタパルトに並ぶドリルミサイルは、当時のイマイのジェットモグラのプラモデルが、そのまま白く塗られて使われている。

代替テキスト
『サンダーバード』のジェットモグラのプラモデルをそのまま使ったかのようなミサイルの再現

いや、セブンファンに一つだけ言い訳を述べておけば、この時期とうに『ウルトラセブン』は、制作陣的には今で言う「オワコン番組」で予算も少なく、これではない話でも、並んだミサイルロケットが全部浣腸器だったり、群れを成した円盤が全部、ガラスの灰皿を上下貼り合わせただけの代物だったりしたことが、後の実相寺昭雄監督の著書でも触れられているので、これは嫌がらせとかライバル意識というよりは、かつて『ウルトラマン』のバルタン星人の軍団が、全部マルサンのソフビ人形だったような、発想の転換のアイディアだったと受け止めておこう。

ジェットモグラとマグマライザーの逸話はここまでだが、少し脇道にも触れておこう。
結果として、マグマライザーのマルザン製プラモデルはかなりのヒットを飛ばしたと、記録でも記憶でも残ってはいるが、マルザンが望んだ「ジェットモグラの販売数越え」に至らなかったのか、それとも地中特撮事態が、現場や予算にかなりの負担をかけるからか、これ以降、ウルトラシリーズで地中戦車の活躍する話は殆ど見られなくなり、昭和ウルトラに限って言えば、『帰ってきたウルトラマン』(1971年)のMATには地中戦車の設定すらなく、『ウルトラマンA』(1972年)『ウルトラマンタロウ』(1973年)には、共に防衛チームに地底戦車が設定されるが、活躍はそれぞれ一回きりであり、『ウルトラマンレオ』(1974年)に至っては、地底戦車は名称決定とデザインと玩具化はされたが、本編では一度も活躍することはなかった。

やはり、それだけ地中特撮は負荷がかかることの証明かもしれないが、第二期ウルトラは、子ども向け文化の飽和期であり、玩具市場もマスコミ玩具の戦国時代であったからか、どさくさに紛れてトンデモな現象も起きている。
この前期、60年代が終わる1969年に、サンダーバードプラモデルを生産販売していた今井科学が倒産しており(後に復興)、その時点で貴重な資産とも言えるサンダーバードプラモデルの金型が青島文化教材社に禅譲されていた。
受け継いだ青島は、70年代にサンダーバードプラモデルブームを再燃させ、ウルトラの第二期では、プラモデル市場的にはサンダーバードのプラモデルも現役でライバルだった。
ところが。
本編画像でお見せできないのが残念だが、ここで一つのドリル地底戦車を見てほしい。
先ほども書いたが、『ウルトラマンタロウ』で登場する地底戦車で、名をベルミダー(ベルシダーではない辺りがややこしい)Ⅱ世という。

代替テキスト
ベルミダーⅡ世のフィギュア

東宝出身の鈴木儀雄氏ならではの美的感覚に、記号としてのツインドリルとキャタピラを落とし込んだ、玩具映えするデザインなのだが……。
実はこのツインドリル。アップにすると分かって頂けるだろうが。

代替テキスト
先端は、確かにジェットモグラそのままでは……

そうなのだ。このドリル部分、まんまジェットモグラのプラモデルをそのまま貼り付けてあるのだ。
そうです、円谷は「また」やらかしちゃいました(笑)
ここまでくればもう、パクリとかデッドコピーとかの問題じゃない。
悪く言おうが良く言おうが、もはや半世紀前のデザインの話だ。逆に清々しいではないか。と。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事