ペスター
油獣の別名を持つ、異形の怪獣ペスターは、定番でもある、バンダイウルトラ怪獣シリーズのソフビを使用した。
このペスターのソフビは、他と少し違った経緯を持って発売された。
ホビー雑誌「ハイパーホビー」が2003年におこなった、ソフビ化リクエスト怪獣人気投票で、一位に輝いた結果商品化されたのだ。
ちなみに、そのキャンペーンの流れで、このペスターは、ハイパーホビー誌限定で、蓄光バージョンも発売された。
そんなペスターソフビの出来であるが、まず造形に関しては文句はない。
ペスターに関しては、旧ポピーのキングザウルス版が珠玉の出来栄えであり、それを凌駕するのは、なかなか難しいと思われていたが、完成したソフビは、近年のバンダイ特有のリアリズムで構築されており、塗装も含めて、なるほどさすがの仕上がりを見せている。
分割にも工夫が凝らされており、ディティールも正確。
着ぐるみの質感と躍動感は、キングザウルス版に一歩及ばないものの、イマドキの怪獣ソフビとしては、文句のないクオリティであった。
しかしこのペスターは、発売と同時に多くの不評も買った商品だった。
不評の原因はひとえに、その小さすぎるサイズにあった。
確かに、バンダイウルトラ怪獣ソフビは、その統一スケールはそもそもなく、デザインにボリュームがある怪獣だと、むしろスケールは小さくなることは、今までのインターミッションでも、何度か語ってきたのではあるが、それでも、このペスターに関しては、少し小さいサイズ過ぎた。
どのくらい小さいかというと、同じバンダイが2007年に発売した食玩の「究極大怪獣」で、ラインナップされたペスターの方が、一回り大きいという本末転倒な現象を、生み出してしまったほどである。
確かに、究極大怪獣版ペスターは、他の怪獣と比べてもひときわ大きく、発売当時は、ことさら話題になったほどではある。
しかし、それでも食玩に違いはないわけであり、まがりなりにも、主軸商品のソフビが食玩より小さいというのは(当時としては)やはり異論を遺してしまった。
ひょっとすると、ソフビの小ささへの不満を受け止めたバンダイが、食玩版のペスターを、ことさら大きく造形させたのかもしれないが、ではその造形の出来栄えはというと、究極大怪獣版は、造形集団・パイロットエースが原型を担当しており、まさにガレージキットレベルに達している。
そしてソフビ版と食玩版は、発売定価が同じ値段であった。
これはもう、何をか言わんや。
造形・サイズ・共に、ソフビより食玩の方が勝っていて、両者の値段が同じ。
これはもう「バンダイソフビをコンプリートする」という目的でもなければ、単に「出来の良いペスターが欲しい」だけならば、どう考えても、食玩版を手に入れたほうがお得なのである。
特撮解説でも述べたが、筆者が今回の演出を撮影したのは2007年の春であり、その頃にはまだ、究極大怪獣は発売されていなかった。
本話では、ペスターは特にウルトラマンと絡むわけではなく、そういう意味ではソフビのサイズの小ささは、演出への影響は少なかったが、それでもやはり、本話演出当時に食玩版が既にあったなら、きっとそちらを使っていただろう。
矛盾している物言いに聞こえるかもしれないが、ソフビ版ペスターに、特に何か欠点があるわけではない。
単独で考えたときには、きわめて出来の良いソフビであるといえる。
しかし、コレクションとして並べたときに、他のソフビより小さすぎて、同じ値段でもっと大きく、もっとリアルな商品が出てしまったその後では、このアイテムの価値が、霞んでしまったことも事実である。
今回は、そんなペスターを、無改造・無塗装で撮影に使用している。