その変形の複雑怪奇さは、HGUCでもそのコンセプトの見地から、カトキハジメ氏のリファインデザインで緩和させるわけにもいかず、今回はABS樹脂さまさまの恩恵で、差し替えしまくりで、どうにかこうにか両形態を再現するに至ったというのが妥当な判断か。
ガブスレイ自体は、この時期頻出した「奇異な形態に変形するモビル・スーツ」で、劇中では主にジェリドと、そして彼をサポートしようとするマウアーがコンビで乗りこなしていた印象が強い。

HGUC版ガブスレイのサイドビューとバックビュー

設定画では、もう少し肩アーマーが左右に突き出ていたり、腿と脛の太さの落差が激しかったりで、フリーキーな体形がガブスレイの魅力だったのだが、旧キットのころは『Zガンダム』1/144クラスのワーストキットとも呼ばれ、今回のHGUC版は、変形に振り回されていて、異常に細い腰や、普通に流れるようなラインで繋がる腿と脛など、どうも「コレジャナイ」感を感じてしまうのは筆者だけなのだろうか……?

ビーム・サーベルを握った上での、腕の可動範囲チェック

各可動範囲は、さすがにどの箇所も旧キットを上回る可動範囲を誇るが、肘の二重関節折り畳みレベルは、まだHGUCがそこまで技術革新している時代ではなく、90度までが限度(特にガブスレイの場合、肘関節を覆う形で前腕カバーが可動を邪魔する)。
肘は変形のシステムで、引き伸ばせば180度折り畳めるのだが、やはりあくまでそれは変形システムの一環だけに、モビル・スーツ形態でその曲げ方をすると悪目立ちしてしまうので乱用は避けたいところ。
肩は変形の都合もあって複雑な動きをするが、肩基部の球体は、一見すると肩スウィング用の可動軸に思えて肩可動に使ってしまいそうになるが、これはあくまで変形時の肩アーマーの位置ずらし用の可動軸なので、モビル・スーツ時の肩の可動にはあまりメリットを与えてくれない。
余談だが、今回のガブスレイでも、ビーム・サーベルは柄の部分が袖口内に、外から見える箇所に収納されているため、実際のビーム・サーベルもその柄を使ってクリアパーツを接続させて再現する仕様になっている。

サーベルを振るうガブスレイのポーズで、開脚の範囲などをチェック

開脚範囲は、旧キットもかなり酷かったが、今回のHGUC版もあまり褒められたものではない。
ネットの一部ではこのHGUC版ガブスレイを「変形を再現するために、1/144では初めてムーバブル・フレームが再現されたMG級」と褒めたたえてる意見も散見するが、逆に言えば他のキットがなぜムーバブル・フレームを再現しないのかといえば、このスケールでフレームと装甲を二重構造にしてしまえば、νガンダムかサザビークラスの巨大級でもないかぎり、可動領域やプロポーションを圧迫するからである。

両脚の前後開脚範囲

なので、脚部の前後開脚も、膝関節こそ90度は曲がるものの、変形との兼ね合いで股関節での前への脚の踏み出しが浅すぎ、また足首の可動も付いてこないので、膝の可動範囲も宝の持ち腐れになっている。
もっとも、ガブスレイの活躍はほとんど宇宙戦闘に限られるので、接地性を求める声はあまりないだろうというあたりが救いか。

ガブスレイを下方から見た角度

『Zガンダム』の可変型モビル・スーツの法則は「モビル・スーツ状態ではAMBACシステムを有効活用するために、体のあちこちに多彩な方向へ向けて装着されているバーニア類が、変形をすることで一方向へ終結する」デザイン的カタルシスが必須だったのだが、ガブスレイの場合このように、普段のモビル・スーツ状態からして、バーニアは全て下方へ向いている。
ガブスレイが変形する意味とは?を問いたくなる(笑)
ちなみに、キットの色分けは基本的には秀逸で、細かい部分もシール補完など行き届いているが、ガブスレイに限らずなぜかバーニア類は(スケールと厚みを考えれば仕方ないのだが)外側と内側が分けられておらず1個1パーツなので、頑張って全てのバーニア類の内側をモンザレッドで塗り分けした。

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