さて。ドルフィン号についてである。
この、メジャーだかマイナーだか、立ち位置も迷うレベルの戦艦メカは、そもそも原作の、いわゆる『ヨミ編』に登場した万能戦艦であった。

漫画『サイボーグ009』ヨミ編に登場するドルフィン号

この時期から『天使編』直前期まで、石森氏はいろいろな意味で、東映動画でアニメ化された映画版2作とTV版との「すりあわせ」で振り回されていた形跡がある。漫画の展開や構造的には盤石だったのだが、掲載雑誌の変化に伴って、第一話をアニメ設定に準じてなぞり直したり、009の出自や007の子どもキャラ設定などを、アニメに沿って変更を加えたり。

それらはきっと、石森氏が自作のメディアミックスに積極的に絡む天才だったがゆえに、自ら抱いてしまった溝だったのだろう。
ドルフィン号は、そうした中で、原作漫画だと『ヨミ編』、アニメだと、劇場版2本目の『サイボーグ009 怪獣戦争』(1967年)に万能戦艦として登場するのだ。

そのドルフィン号が漫画とアニメで共通して持っていた設定は、ギルモア博士の元、00ナンバーサイボーグ達の移動要塞となりつつ、飛行・潜航・地中それぞれのモードで活動可能で、サブメカ(後述)のV-TOL小型偵察機も収納可能というのが共通設定。
ここで、70年代以降、漫画家とTV制作会社の足並み問題でテーマ化してくる始まりも垣間見えていて、このドルフィン号、漫画版では最初は、かなりシンプルなデザインで、まるで手塚治虫『マグマ大使』のマグマのロケット形態かのような見た目で登場するのだが、敵の攻撃を受けて破損していくうちに、外装がまんま一枚分、文字通り「一皮むけて」中から新品状態でアニメ版に似たドルフィン号が改めて登場するという流れがある。

漫画『サイボーグ009』ヨミ編 文字通り「殻を破って」外見が一変するドルフィン号

今にして思うと、これは映画版アニメに登場するドルフィン号に、漫画版の方がデザインを改めて寄せるために行われた儀式のようなもので、そう考えると外装一枚剥がれたドルフィン号は、劇的にではないが、アニメ版のツートンカラーの要素などが足されていて「アニメ版に寄せた結果」にも見えるので面白かったりする。
さて、この時期の子ども向け番組では、『ウルトラセブン』(1967年)など盛り上がっていたが、『ウルトラセブン』でなぜかウルトラアイが商品化されなかったように、『サイボーグ009』でも、ドルフィン号は最後まで商品化されなかった。まだマーケティングとしては牧歌的な時代であり、フィギュアや立体化よりも、菓子類のオマケのシールなどがメインだった時代の作品だからであろう。

ここで本来ならば、アニメ版のドルフィン号は、そのデザインや扱いはどうであったかという流れになるはずなのだが、ここではあえて触れずに、話を次に進めてみよう。

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