「もう半年になりますわ。山鳥の好きなあの子は、夏休みに一人で山へ行って、その帰り、国道87号線でトラックにぶつかって……。しかもひき逃げだったんです。いまだに犯人がわからないままなんですよ」
「ほう、これがアキラ君が考えた怪獣達かぁ」
「あぁこれがヒドラですね」
「はい、あの子の一番好きな絵でした。『ヒドラは本当にいるんだよ』って、しょっちゅう言ってましたわ。『誰も信じてくれないけど僕本当に見たんだ』って。鳥や獣だけがあの子の生きがいでしたからね。ヒドラの絵が当選して、石像が完成した時はそれはもう大変な喜びようでしたわ。今でもその時のあの子の顔が忘れられません。子どもたちみんなの希望でしたのに……」
「この子だわ。本部へ現れたのはこの子なのよ!」
「あぁっ!」
「助けてくれー!」
「キャップ、警視庁より緊急通報です。ヒドラは国道87号線に姿を現し、車を襲いながら東京に接近中」
「車を襲う?」
「はい、すでに数十台の車が被害を受けています」
「出動準備!」
「ヒドラが車を襲う理由だが……」
「少年と関係があるんじゃないかと思うんだ」
「やっぱり君もそう思うかい」
「うん、きっとヒドラに少年の魂が乗り移ったんだ」
「呪われた、国道87号線か……」