前回は「『シン・機動戦士ガンダム論!』第16回『アニメ新世紀宣言・1』」

映画版『機動戦士ガンダム』ブーム過熱暴走へ

映画版『ガンダム』公開直後には、朝日新聞アサヒグラがそれぞれ『燃えるガンダム人気』『ティーンズを熱中させる機動戦士ガンダムの世界』なる記事や特集を掲載。
そしてまた、出版社のラポートが、『アニメック』16号扱いで、『機動戦士ガンダム大事典』を発行したのもこの月。

セイラ「ハヤト! カイ。きこえて! 外から、グフを狙い撃ちできませんか!……グフを倒してくれないと、ホワイト・ベースが」
ミライ「ブライト! グフを振り落とします!背面飛行に入ります。シート・ベルトを使ってください!」

『機動戦士ガンダム大事典』の特徴は、各話の解説や設定画などは先発のガンダムムック関係に既に隅々まで網羅されていたために、本書ではそれらをある程度の割り切りで編集し(いや、50ページを超す人名・用語辞典は、まさに“大事典”の名にふさわしい編集ぶりだが)、むしろ富野由悠季監督をメインにフィーチャリングして、徹底的にドキュメンタリックに、テレビ版の制作プロセスを追いかけ続けたインタビュー記録の面であろう。
特に資料的価値を重んじて引用で記すのであれば(インタビュー収録はテレビ版制作時期)。

編集 ザビ家の三男が抜けていますが戦死したのでしょうか?
富野 これもガンダムの物語に全然表れていないのですがザビ家がジオン・ズム・ダイクン一派を掃討した仕返しにダイクン一派の何者かに暗殺されたのだろう、ということになっています。テレビではわかりませんが(笑)

ラポート『冨野語録』

といった、近年、安彦良和氏の漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』等でクローズアップされた裏設定や

富野 (前略)それから何故0079年だったかというと、ガンダムが始まったのが1979年だったからです。
編集 それで終わったのが80年……だいたい四ヵ月ぐらいだったんですね、あの物語の期間は?
富野 想定できますね、そして戦争が終わった日は宇宙暦80年の1月1日です。もし不満があるのなら別の日でもいいですが。
編集 1月1日で結構です。これが記事になると同時に歴史的事実になるんですから。

ラポート『冨野語録』

ここでの「一年戦争の終戦記念日は1月1日」といったような、今では「『ガンダム』世界の司馬遼太郎」などといった冗談のような肩書者たちが、絶対真理として崇めている「ガンダムという歴史」の公式設定の数々も、この富野監督と『アニメック』編集長の小牧雅伸氏とでの、丁々発止のやり取りで、思い付きで出てきたものが多いということも、重要な価値観であろう。

カイ「うわーっ!」

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