神戸ポートタワー

神戸を舞台にした本エピソードの後編では、神戸を象徴する神戸ポートタワーが登場する。

特撮セットに、ミニチュアとして登場するだけではなく、キングジョーが迫りくる中、エレベーター内に人々が閉じ込められるという、サスペンス描写の舞台にもなった神戸タワーは、正式名称を「神戸ポートタワー」といって、昭和38年に建造されて以来、21世紀になった現在も、神戸ルミナリエなどと共に、神戸のメイン観光スポットとして広く知れ渡っているのである。

今回の話を再現するのに、神戸タワーの存在は欠かせないと思ったので、がんばってミニチュア再現に挑んでみた。

モデラーとしても素人同然な上に、ビルすらも紙細工ですませてしまう筆者にとって、最初、神戸タワー再現を思いついても、どうやって手を付けてよいのか、悩みに悩む日々が続いた。

最初に思いついたのは、「神戸タワーがそのまま模型で発売されているのではないか」であった。

神戸タワーと並んで、全国的に知名度が高い建造物観光地の、東京タワーや大阪城などはプラモデルも出ていて、現地に観光へ行けば、土産物コーナーで置いてあったりもするのである。

東京タワーなどなら、時計とセットになった置物まであったりする。

それがあれば、多少のスケール違いなどには目をつぶろうと、神戸タワーに直接問い合わせてみたのだが、結果は「申し訳ございませんがそのような商品はありません……」とのこと。

これはいよいよもって、自力で作るしかないのかと、神戸タワーの実際の画像を睨みつける日々が続いた。

ネットなどで検索をかけてみると、僅かながら鉄道模型情景などで、神戸タワーを作っている人はいるのだが、やはりみんな苦労しているご様子。

まともに考えたら、パイプを芯にして真鍮線か針金で鉄骨を組んでいき、ハンダで固定していくしかないのが現実。

自慢ではないが自分には、これだけの細かい作業量をこなす自信はないし、これだけの物量の真鍮線を、中学校の技術授業以来やったことのなハンダ付けで、精密・正確に幾何学的に構成していく技術は持ち合わせていない。

せめて接着だけでも手馴れた方法でと、真鍮線を、弾力があって細いエバーグリーンのプラ棒に変えてみるも、なかなかこれが上手くいかず断念。

画像を見つめて、ただただ唸る時間だけが通り過ぎていった。

神戸タワーは、無数に幾何学的に組み合わさった鉄骨が、きれいなカーブを描いてシルエットを形成している。

しかも下部と上部にはそれぞれ、展望台や基部がある。

もはや、これは諦めるしかないかと観念しかけていたとき、セブン本編に登場した神戸タワーのミニチュアを観なおして、頭に閃くものがあった。

神戸ポートタワー 円谷版

そうかそうなのだ。

筆者はなにも、本物の神戸タワーを正確に再現する必要はないのだ。

筆者が再現しようとしているのはウルトラの画面なのであって、そこで筆者が再現するべきは、実物の建造物ではなく、円谷プロが製作した、画面の中のミニチュアのセットなのだ、と。

観ればセブン本編の神戸タワーは(もちろん流石の出来ではあるが)、本物ほどには緻密ではなく、展望台なども簡素化されている。

これなら出来るかもしれない、と光明を見出したとき、さらに筆者の脳裏に、忘れかけていた「自分がわきまえるべき分」を思いついたのであった。

「そうだ、自分は元々モデラーでもプロでもない。紙細工と玩具で名場面を再現してきた、それだけの存在ではないか。自分の基本はローテクなのだ」と。

そう思えば、後は早かった。

まずは簡単に設計図を引き始める。

実際の神戸タワーは全長100mで、高さがセブンの倍はあるはずだが、セブン本編での神戸タワーのミニチュアの高さは2mで。セブンより少し高い程度に仕上げてある。

これは演出上の問題であろうから、筆者の再現特撮もそれに準じて、神戸タワーのミニチュアの全長を20cmとして計算した。

(筆者のセット製作の基準は、ウルトラヒーローのウルトラ超合金や、アクションヒーローの大きさであり、これらは平均で17~18cm前後。ウルトラマンを40mで計算するとだいたい1/250スケールであり、実際のミニチュアを基準として考えると1/10程度で製作している)

設計図が描けたら、いつものように紙を丸めてパイプにして、そこにワッカ状に切り出した3mmスチレンボードをはめ込んでいく。

全体のラインを形成する鉄骨は「赤い絹糸」を張り巡らせた。

上下両端のスチレンボードに針で赤い絹糸を通して手繰らせて張る。

要はあやとりの要領だ。

神戸ポートタワー製作途中

糸は赤いから、後から塗装の必要もない。

後は真鍮線で、アンテナなどを再現して、透明プラ板を使って看板を作っただけ。

決して円谷のミニチュアを、安っぽく見ているのではない。

むしろ円谷のおかげで、自分の相応な分を再確認させてもらったのだ。

単体で見れば稚拙な細工かもしれないが、筆者の再現特撮画像には、適度な出来なのかもしれない。

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