スーパーロボットまんがの常連「仮面の貴公子」ライバル幹部
だからこそ、「スーパーロボットまんが」では、毎回粋にカッコヨク立ちはだかりながらも、毎回敗退して「えぇいまたしても! この次こそ必ず!」という捨て台詞を遺さなければ“いけなかった”はずの、仮面の貴公子敵幹部・シャアも、ガルマ・ザビという、「自分より地位も血統も上だが、自分より明らかに胡乱で杜撰な若者」の座標人物を得ることで、その台詞を吐かずに、むしろガルマをガンダムに向かわせながらこんな台詞を吐けるのだ。
シャア「ガルマが苦戦して当然さ。我々が二度ならず機密取りに失敗した理由を彼が証明してくれる。しかも、我々以上の戦力でな……。ドズル将軍も、決して私の力不足ではなかった事を、認識することになる」
日本サンライズ『機動戦士ガンダム 記録全集 台本全記録』
シャアがザビ家への復讐を胸に秘めていて、だからガルマもザビ家の一員である以上、復讐の対象ではあるというのはガンダムファンの周知の事実だが、それと同等かそれ以上に、ここではシャアを、負け続けるだけで、なのにキザなスタンスを崩さないブザマな「ありがちな敵キャラ」にさせないための人物相関だとも言える。
だから、ここで名前が挙がったドズルが、意外と素直な性格なのも、誰よりも弟のガルマ想いであったことも、この台詞一つを正当化させるための擦り合わせであったとも解釈は可能だ。
だからこそ、ガルマがモビルスーツで戦闘に出ていかなかったことを知ったシャアはこうも言ってみせる。
シャア「そうか、……ガルマは乗らなかったか。……彼が、ガンダムと戦って死ぬもよし、危ういところを私が出て救うもよしと、思っていがな……」
日本サンライズ『機動戦士ガンダム 記録全集 台本全記録』
ここへ来て、初めて視聴者は、シャアがプリンス・シャーキン等とは少し違った系譜の悪役だと認識する。しかし、それでもまだ、「スーパーロボットまんがで、悪の組織の内部分裂や謀略は、よくあること」の範疇を出ないのだ。
だが、その違和感が確信に変わるのが、シャアがまさに第10話『ガルマ 散る』で、ガルマを死の罠に誘い込みつつも「どうも、味方の兵まで騙すのは性にあわんな」という人間臭い台詞でなのだ。そしてその一方で、確信犯的にアムロの戦闘能力が、この時点で既に「見えない敵を察知する」ところにまで到達しているのに、放映当時気づいたファンは少ない。









