続々登場! 悪の組織の敵幹部!
今、“敵新幹部”という書き方をしたが、今回の項で何度か重ね合わせている、『仮面ライダー』『マジンガーZ』(1972年)等をはじめとした東映ヒーロー物では、戦闘員とそれを指揮する毎回の怪人の他に、大首領(ラスボス)の直属で、怪人や作戦を指揮する幹部、要するに“死神博士”とか“地獄大使”とか“あしゅら男爵”とか、そういう存在が必須なのだが、そこではやはり、毎回のお約束で、敵怪人がヒーローを完全に倒してしまうという終わり方はあり得ないので、毎回指揮官幹部の作戦は失敗を続けることになり、リアリズムの観点からも、演出の盛り上げ的にも、主役に対して負けが込み続けたら、指揮官としての資質を疑われるのは当たり前であり、それゆえ『仮面ライダー』の敵幹部達は、ライダー相手に負け続けたら、最期は自らが最強怪人にヘンシーンし、ライダー相手に戦い、敗れて死んで、ショッカーは次の幹部を招き入れるというのがシリーズの味付けになっていたのだ。
『ガンダム』では、第1話からその役を担っていたシャアが、一度ガルマの部下になり、ガルマは自分専用ザクこそ持っていたものの、その姿を披露することなくシャアの謀略の前に消えていくという演出は、一見スーパーロボットまんがらしくないように見えて、実は「悪の敵組織内部で、謀反や謀略がある」は、逆にお約束でもあったので、だいたいはそういった謀略はシリーズ後半で描かれることが多いが、このガルマ謀殺の流れ自体は、スーパーロボットまんが的には、そう奇異な演出にはなっていなかった。
そして、ガンキャノンがメインで初活躍する第9話では、アムロがガンダムの秘めたる性能に気づき、空中戦を仕掛けるというのがクライマックスの戦闘描写の肝になっているのだが、ここで視聴者はようやく「あぁ、ガンダムって飛べなかったのか」と気づかされる上手い演出の流れになっている。