「ガンダムは空を飛べない! 俺ならガンダムを空から攻めるね!」(誰だよお前)

スーパーロボットが空を飛べるかというエクスキューズは、このジャンルのパイオニアでもある『マジンガーZ』が、シリーズ中盤で「実はマジンガーZは空を飛べないので、空飛ぶ機械獣(懐かしい響き!)には弱い」という流れを生み出し、マジンガーZが空を飛べるようになるサポートメカ、ジェットスクランダーが研究開発完成するまでの間を、盛り上げに盛り上げたという定番の流れがあったのだが、逆を言えば“その手法”自体が、始祖でありパイオニアだった『マジンガーZ』だからこそ許されたというのもあり、ポスト『マジンガーZ』の『グレートマジンガー』(1974年)は、当然として第1話の時点から飛行能力を持っていたし、同じくポスト『マジンガーZ』の立ち位置だった『ゲッターロボ』(1974年)の3種のゲッターロボのうち、主役のゲッター1は、むしろ空対空の飛行型であったりもして、既にこの時期「主人公スーパーロボットが空を飛べない」は、ある種失笑物の設定にさえ思われていた。

しかし、そもそも20m級の大型の兵器が人型をしていて、目もあり指もある時点で充分トンデモな存在であるわけで、絵でその重量感を表現しようとしたり、実用性を考えるとき、その人型ロボットが空を飛ぶ能力を有する必要性は、実は戦争の兵器として考えた時、あまり有効性はない。

しかも、富野演出の巧さは、仮にガンダムのような多目的用途汎用型兵器に、飛行能力などいらないという当たり前の一般常識を前提にしながらも、あえて物語を地球からスタートさせるのではなく、宇宙からスタートさせることで、「宇宙空間を自在に舞うガンダム」を先に描く事によって「ガンダムは飛べない」を、地球上に降りるまで視聴者に意識させなかったことだ。
その件について、富野監督は放映当時の『月刊OUT』1979年10月号でのインタビューでこう答えている。

富野 要するに現実というのはこういうもんなんだということです。というのは、単に物語だけを追いかけて、カッコよく、やっていくんだったらば、おそらく、地球から物語が出発したと思うんです。しかし、そんな描き方だと、従来の疑似SF的な部分を超えられないと思って、未来の世界を描く方法論として、単純に言っちゃえば、全部とにかく、逆になぞってみることで、リアリティを少しでも感じさせるようにしたかったというのがあるわけです。

キネマ旬報社『ガンダムの現場から』富野由悠季インタビュー

スーパーロボットまんがが、シリーズが開始して以降、なぜか途中で「主役ロボットの弱点は、空を飛べないことだ!」と、ネットスラングでいうところの“ドヤ顔”でやってしまい、飛行サポートメカの開発と登場を山場に持ってくるという演出は、実は『ガンダム』以降で、それこそポストガンダムを狙っていたスーパーロボットまんが『超獣機神ダンクーガ』(1985年)が、『ガンダム』も続編の『機動戦士Zガンダム』放映の頃に、恥ずかしげもなく堂々とやってみせてしまったという逸話も、この時期のガンダムマニアであれば覚えている人も多いであろう。

パイロットA「マチルダ中尉! 五番機が!」
マチルダ「構うな! もっと低空で!」
アムロ「お前たちにマチルダさんも、補給物資も、やらせるかァ!」
パイロットA「コア・ファイターです」
マチルダ「さすが早いわね。しかし、あのジオンのモビルスーツ、グフには……」
ハヤト「アムロ、こんな処でガンダムに換装するのか!」
アムロ「やるしかないな! コアファイターでグフは叩けない」
ハヤト「よ、よーし! レーザー・サーチャー始動するぞ!」
アムロ「ああ!?」
カイ「こいつは、足がおそいからね! よう! 早い処、ガンダムになっちゃってよ!」
アムロ「す、すいません! 援護たのみます! ミデアの方にもグフがまわっているはずです!」
カイ「判ってるって!」

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