『ガンダムを倒せ! 再生ロボット軍団総登場!』

その上で、それら水陸両用モビルスーツ軍団が出揃った段階で、大々的に繰り広げられるジャブロー戦、第29話『ジャブローに散る!』は、如何に低視聴率ロボットまんがだった『ガンダム』でも、最高視聴率を叩き出した回だけあって、今や懐かしいレベルのガウ攻撃空母が編隊で大挙押し寄せてきて、そこから降下するは、古参のザクもいれば最新のドムもいる。空対地ではドップファイターまで動員されて、一方、水陸両用では、ゾック、アッガイといった新型と共に、いきなり型落ち扱いのズゴックやゴッグも大量投入される。

挙句には、「ジャイアントバズーカを担いだグフ」などは、もはや兵器の個別運用云々を配慮できない、総力戦の混沌さと賢明さと刹那さを感じさせてくれる。

カイ「逃がさねえぞ!」
ガイア「マ、マッシュ……オルテガ……仇も討てず……」

一方、地球連邦軍側も、とうとう量産に成功したモビルスーツ、ジムを戦線に投入する。
この「正義の味方の主役ロボを、量産して配備する」は、かつてダイナミックプロの漫画家・桜多吾作氏が、師匠の永井豪氏原作の漫画『グレートマジンガー』のコミカライズで描いた図式ではあるが、玩具会社が正式にスポンサードするテレビコンテンツ内で「主役メカの簡易型の量産化」を、一発ネタではなくシリーズの展開として描いたのは、少なくとも『ガンダム』が初めてであっただろう。

しかし、ジャブロー戦が、当時の子ども向けスーパーロボットまんがとして最高視聴率を叩き出したこと、そして、ザク、グフ、ドム、ズゴックといった今までの強敵たちが、モブのメカ扱いになって、さしたる活躍も見せずに十把一絡げの烏合の衆になってしまったことは、スーパーヒーロー物では“正しい”演出と数字なのだ。
『ウルトラマン』(1966年)シリーズや『仮面ライダー』など、主に実写特撮のヒーロー物では、毎回登場する着ぐるみを、撮影終了後も管理しておくことで、それらをひとまとめにして“再生軍団”等と称して、大挙して再登場させる演出が、子ども向けヒーロー物ではしばしばあった。

ロボットアニメでは、作画コストもタスクもメカの新旧では違わないため、どうせ新しく作画するのであれば、以前やられたメカをわざわざ描くよりも、新デザインの敵メカを、という概念が強く、そうそうとられなかった演出技法ではあったが、こと『機動戦士ガンダム』(以下『ガンダム』)に限っていえば、零細企業のバンクシステム大量導入アニメであったし、メカを単体の怪物として描くのではなく、大量生産の兵器運用として描く戦争アニメなので、この手法が有効であると言える。

ジャブロー戦で、ジオンがまるで蔵出し総ざらえのように送り出した歴代モビルスーツ群は、一方でこの一戦に賭けるジオンの意気込みと、モビルスーツの特性適材適所的運用を行えるだけの余裕のなさを画で演出しつつ、製作側はバンクフィルムやセルを流用することで、少しでも手数を減らしながら大量物量戦を描けるという、一挙両得の部分があり、それは児童層には「歴代敵ロボット再生軍団総登場編」として楽しめる、そういう娯楽編としても機能していたからこその、最高視聴率話になったのである。

ブライト「……ミデア輸送隊、マチルダ隊の戦死者に対して。哀悼の意を表し、――全員! 敬礼!」
アムロ「マチルダさん、マチルダさん……マチルダさん、マチルダさん、マチルダさん」
アムロ「あゝ……マチルダさ~~ん!」
アムロ「マチルダ……マチルダ~~~さ~~~ん!」

次回「『シン・機動戦士ガンダム論!』第26回 スーパーロボットアニメとしてのガンダム・7」
我らがガンダムを狙うジオン軍が送り込んできた次なる敵は、水陸両用型モビルスーツ! 負けるなガンダム!
君は、生き延びることができるか。
(フィギュア再現画像特殊効果協力 K2アートラクション)

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