――岡本さんは先ほどから「考えないで動く」と自称されてましたが、いざ動く時にはやはり大変な質量の判断をされているんですね。

岡本 (自分は)決して考えないタイプではないんですよね。むしろ考えることは好きだし、本も凄く好きで、哲学なんかも凄く好きなんです。好きなんだけど、でも、生きることって、もっと単純なんじゃないかなって思うんです。だって、死ぬまでってたいした時間じゃないじゃないですか、百年足らずでしょ。私はその百年足らずを、一人で生まれて、一人で死んでいくと思っているからこそ、人と出会えた時に、その人に向かって思い切り愛情を注ぎたいんですよ。今回で言えば『VOICTION』のみんなもそうですし、大賀さんもそうですし、だらこそ、差し出したり差し出された手の暖かさっていうのが、一番大事なんじゃないかなって思うんです。今繋がってる人とも、ひょっとしたら数年会わないかもしれない。これが最後かもしれない。でも、それで愛情が変わることは無いですよね、ずっと。私にとっては、一度出会った人っていうのは、そういう存在なんです。人生っていうのはそういう風にできている気がして、だから「嫌いな人」ってあんまりいないんです。「嫌いな人」にエネルギーを注ぐのが嫌なので自然と関わらないようになっちゃうからかも(笑) 悪口を言ってる自分が嫌だなァ、と思います。人生ってもっと、豊かで、短くて、夢のようで、(現実社会に)遊びに来ているような気がする。だから、迷惑をかけるのは嫌だけれども、自分が誰かに迷惑かけるかどうかなんて、わからないじゃないですか。今もし、一緒に頑張ってる仲間が、どこかへ去るって決めたんだったら応援するし、力が必要だと言われれば貸すし……。自分以外のものを捻じ曲げるのは難しいけれども、自分だけはコントロール下にあるので。それは役者として生きているっていう意味においても同じだと思います。役者って「品」とか「魂」とかが現れるものだと思っているので、品がある人はやっぱりどんな役を演じても品があるんですよ。品がない人間って売れるかもしれないけれどもやっぱり品がないんですね。私にはそれが素敵な表現だとは思えないので、売れてなくても、お金になってなくても、綺麗な表現をするという人を私は尊敬するし、そういう物が、それを読んだり観たり聞いたりしてくれている人たちに、必ず良い影響を与えると信じているんですね。

岡本麻弥さんが模索した「自分の魂を伝える手段」そこへの鍵は、ひょっとしたら海の向こう側で彼女をまっていたのかもしれない。

次回、「岡本麻弥アクトレスインタビュー・6『岡本麻弥と劇場版「Zガンダム」と「再びのエマ・シーン」と』」です。 君は、刻の涙を見る……。

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