前回は「出渕裕ロングインタビュー8 出渕裕と「可愛い富野由悠季」と『オーラバトラー戦記』と」
――富野談話で小説に関しては、こんなコメントが90年代初頭に残されています。
この間、角川スニーカー文庫の僕の担当が言うのよ、嬉しいのとショックなのと疲れた、っていう感情が混ざっちゃったんだけど、「うちで書いてくれるようになって、今年で10年ですね。作家って、大体本当の意味で売れるのは、10年経ってからなんですよ。そういう意味では、今年あたりは良い年なんじゃないですか」って。こっちは「10年やってしまった」って感じで、もう何もないんだよね。そういう気分がかなりあった時に、「だから頑張ってください」だもん。ガックリ来た。(笑)
ラポートデラックス『機動戦士ガンダム大辞典【一年戦争編】復刻版』1991年
出渕 最近は(小説を)書いてないみたいだから、いいんじゃないですかね(笑) 後は……さっきのクェス問題があって……初号(試写)で(『逆襲のシャア』を)観た時は、なんだこりゃ、随分ヤバイやつやっちゃったなぁと思ったんですけど、観返したら面白くて「お、これはスルメのように味が出る」と思って、もう一回観返したら「えっ、これ傑作じゃん!」と思って。庵野(『逆襲のシャア』では戦艦のデザインなどで参加)に、「いや、『逆襲のシャア』いいよ」って言ったら「渕っちゃんおかしい! 『逆襲のシャア』がいいはずがない! 酷い。アレは酷い!」って話をしてたから「庵野、一回しか観てないだろ、お前。 騙されたと思ってもう一回観てみろ。絶対いいから!」って言って、次会った時に庵野が「『逆襲のシャア』サイコー!」になってたんです(笑)
――あぁ、その話はすごく分かりますね。僕も当時同じような感じでした。
出渕 一回しか観てない人は、だいたいボロクソに言うんです。いや、僕もそうだったんですけど(笑) あれはとにかくね、キャラクターに感情移入出来ないんで。「クェス、嫌な女!」とかね。