大牟山からその麓の町までを舞台にした、毒ガス怪獣ケムラーの進軍と、それを迎え撃つ、我らが科学特捜隊とウルトラマンの戦いは、青空背景と山セットをベースにして、再現特撮が撮影された。
本話の特撮の特徴としては、ほとんどのシーン・カットにおいて、ケムラーの吐く毒ガスが、状況や舞台に充満しているということ。
いくら一人暮らしの気ままなライフスタイルとはいえ、筆者の住むマンションで、煙を炊いて撮影をするわけにもいかない(笑)
よって毒ガス描写は、全てフォトショップ処理に頼る形で、コンテを構築していった。
まずは冒頭は、噴火口から現れるケムラー。
『ウルトラ作戦第一号』『呪いの骨神オクスター』などで使用する湖のセットの、水を張らない状態を、火口に見立てて撮影した。
本話の特撮画像では、濛々たる毒ガスが印象的だったので、今回は全カットで、ケムラーの目を目立たせるためにフォトショで光らせてある。
続いて、ケムラーに狙われる小型ビートルのサスペンスシーン。
筆者は今回、再現特撮の為にDVDを観返すまでは、このシーンがクライマックスだと勘違いしていた。
今回観直してみて、あまりにも序盤のサスペンスだったことに驚いたが、しかしやはり、全編を見渡してみても、この後は平坦な攻防戦に終始してしまう感が強く、このシーンをクライマックスだと勘違いする感性も、あながちおかしくはないのである。
小型ビートルの噴射炎や、ケムラーの尾から発射される光線もフォトショ描画。
小型ビートルが発進しようと機首をもたげるカットでは、ビートルのミニチュアの下にスペーサーとなる小物を挟むことで角度を変えてある。
詳細はケムラーソフビの解説で述べるが、ケムラーのソフビは通常の物と、背中の甲羅が開いたカスタム品の二種類を用意。
各カットごとに使い分けて、甲羅の開閉が無理なく繋がるようにした。
以前『電光石火作戦』再現特撮では、ヒレの開いたガボラと閉じたガボラを、違う年代・メーカー・サイズの二種類のソフビで再現したところ、ヒレ開きガボラとヒレ閉じガボラ、それぞれのガボラが同じキャラとしてビジュアルで繋がって見えないという弊害を生んだため、今回は同じソフビを二体用意して、カスタムで違いを表現する手法をとった。
やがて麓へ進撃し、自衛隊戦車舞台を蹴散らして町を襲うケムラー。
町はいつもの紙細工民家や紙ビルを使用。
本話での変身シークエンスは、罠のように開いた甲羅にビートルが激突する流れだったので、背後から迫るビートルに向けて、ケムラーの甲羅が開くカットでは、フォトショで甲羅に強い移動ブレぼかしをかけ、そこへビートルを合成。
ビートルから落下しながらのフラッシュビーム点火を経て、ウルトラマンが登場する。
ウルトラマンとケムラーの戦いは、基本的にテレビどおりに切ったコンテで展開。
開いた甲羅の中から見えるケムラーの心臓部は、フォトショで強めに光らせてある。
マッドバズーカは、タミヤの1/35MMプラモデルでラインナップされていた、歩兵用のバズーカを、砲身部だけ撮影するという苦肉の策。
マッドバズーカの直撃を受けたケムラーは、再び火口に向かい、ひっそりと(フォトショ処理で)目を閉じて、物語は幕を閉じる。