ウルトラセブン
ウルトラマンに次いで円谷プロが送り出した、M78星雲の宇宙人ヒーロー・ウルトラセブンの再現は、にバンダイが発売した、ウルトラ超合金とウルトラアクションヒーローの、二種類のウルトラセブンフィギアを使用して行うことになる。
2020年代の現在だと、「ウルトラマンの可動フィギュア」といえば、S.H.Figuarts、ULTRA-ACT、超動等いくつもカテゴリが思い浮かぶが、筆者がブログを始めた時は、上記した二種しか選択肢はなかった(むしろ、二種類「も」という感覚だった)。
ウルトラ超合金は、バンダイが2004年から展開していたウルトラヒーローの可動フィギア。
材質は合金とABSで、肘や膝の二重関節や腰の前後屈伸など、多様に可動して様々なポーズが決められる、対象年齢15歳以上のマニア向けアイテム。
ウルトラで超合金というと、筆者の世代だと、70年代後半の第三次ウルトラブームの中で、やはりポピー(現:バンダイ)が発売した、可動型超合金の初代マン・セブン・タロウ・ジョーニアス・80などを思い出すが、関節可動重視のコンセプトといい、今回バンダイがこの商品にあえて「超合金」の冠を課したのも、そこへのリスペクトがあったからに違いない。
ウルトラ超合金では、初代マン・セブン・新マン・エース・タロウ・ネクサスが発売された時点で終了。
エースまでの順調なリリースの後、展開がピタリと止まってしまい、ファンの間で「もう打ち切りになったのか」と憶測が流れた後に、タロウがリリースされたという、そういう経緯もあるために、いつが本当の終了時なのか明確でないまま、シリーズはフェイドアウトしていってしまったのだった。
上記したように、近年はアクションフィギアがブームになってはいるが、例えば、素体としてのフィギアにスーツを着せるタイプのフィギアは、仮面ライダーとウルトラマンでは、その商品数や商品バリエーションに、大きな差が出来ている。
ジャージや皮スーツで構成されている仮面ライダーとは違って、ウルトラマンは一部を除き、全身一体型のウェットスーツをベースにしているため、縮小したサイズの可動フィギアでは素体はともかく、そのスーツの表現が困難だというハードルが昔からあるからだ。
ウルトラで商品化された、素体にスーツを着せるタイプの可動フィギアの最古参としては、60年代後半から70年代においてのタカラの「正義の味方」「変身サイボーグ」などが挙げられるが、この頃はまだ、スーツの材質のリアリティを問う時代ではなく、フィギアに着せるスーツも、それがウルトラであれライダーであれ、全てがビニールの時代だった。
やがて80年代に入り、バンダイが「リアルホビー」と銘打って、ウルトラマンやバルタン星人の可動フィギアを、高価な商品帯で売り出したことがあったが、とてもじゃないがリアルでもないし、可動させようにも、どうにもろくに動かない代物でしかなかった。(リアルホビーはスーツ式ではなかったが、ウルトラのボディの質感を再現しようとして、結果上手くいかなかったアクションフィギアの例としては、この流れで語る価値はあると思う)
その後、商品化権の問題や材質の問題もあって、ウルトラマンのスーツ着せ式可動フィギアは、近年になるまで、様々なメーカーで、何度かチャレンジされてきたにも関わらず、成功例はあまりなかった。
メインで商品化権利を保有しているバンダイも、子ども向けの玩具カテゴリで、アクションフィギア・ウルトラマンダイナを、一方マニア向けの商品で「ウルトラの星計画」を、それぞれ技術向上して制作してみたが、前者はスーツの質があまりにも悪い出来であったり、後者はスーツの強さにフィギアの可動が負けてしまい、結果、どちらも決定的な成功例にはなりえなかった。
その後は、メディコムやオオツカ企画などといった、90年代から台頭してきた可動フィギアメーカーによって、ウルトラヒーロー達も商品化されるようになっていったが、質感・可動・スケール感・造形、全てをクリアした決定版というのは、2020年代の現在でも、これがなかなか出てこないのが現状であったりする。
それゆえに、2000年代当時は、この「ウルトラ」で「超合金」という「割り切った」カテゴリ玩具がマニア層に受け入れられたのだ。
ウェットスーツ特有の、ボディラインのなめらかさ表現を最初から排除し、全身の可動に趣を置くコンセプトで、全身にはっきり見える可動分割線を、隠そうともしないその心意気は、イマドキのS.H.Figuartsシリーズにも潔く受け継がれ、見栄えを捨てきった代わりに、大きな代償としての可動域を得ることが出来、結果、「ウルトラの星計画」のようなフィギアでは不可能な、ダイナミックなポージングを可能にした。
見栄えを犠牲にした分、ウルトラ超合金のプレイバリューは、発売当時としては高かった。
付属品も、初代マンとセブンこそは手首のみだが、新マンではウルトラディフェンダーを初めとして、ブレスレットの全バリエーションが付属して、エースでもエースブレードやガスタンク、タロウではブレスレットランサーのみならず、バケツまで付属している、という、ULTRA-ACTやS.H.Figuartsを先どったかのようなこだわりぶり。
今回、ウルトラセブンでは、そのウルトラ超合金と、その廉価版として2006年に商品展開されたウルトラアクションヒーローという商品で、セブンを演出表現していくことになる。
全てにおいて、アクションヒーローよりも優れていると思われている、ウルトラ超合金だが、例えば、可動箇所が少ないアクションヒーローの方が、腹部の分割線などが無いために、上半身の見栄えが良かったりする。
また、ウルトラ超合金とアクションヒーローは、内蔵しているギミックに違いがあるために、上半身のシルエットが激しく違うが、元々のスーツアクターの体型やスーツのボリュームを考慮すると、セブンとエースに限っては、アクションヒーローの方が劇中イメージに近かったりもする。
ただアクションヒーローは手首が拳しかなく、アイスラッガーも取り外しできないため、そういった演出表現の際は、ウルトラ超合金を使う機会が増えるだろう。
今回使用するアクションヒーロー版のセブンは、商品そのままではなく、より本編のセブンらしさを出す為にカスタムを施してある。
まず、頭部と手首を、同サイズのウルトラヒーローシリーズソフビから移植してきた。
アクションヒーローシリーズは、全般的に頭部が小さめに出来ており(ソフビと同じ金型を使ってはいるが、ムク成型のため、硬化後は特に縦方向に収縮してしまうからである)、これにソフビの大き目の頭部と、無骨なグローブを移植することで、より、セブンのスーツアクターの上西弘次氏のシルエットを再現することが可能になった。
アクションヒーローは胴の幅は太いので、この二つを移植するだけで、イメージがかなり劇中のものに近くなる。
ポイントは、頭部を取り付けるとき、少し埋め込んだ感じにすること。
特に初期セブンの首はかなり短いので、ここも再現ではポイントになる。
また、移植したソフビの頭部に関しては、アイスラッガーの隙間をデザインナイフでカットして、こめかみのスリットの中の塗装をクリーム色で追加しておいた。
さらに、胸のプロテクターと首の隙間を銀色で塗装することで、劇中初期タイプのセブンを再現してある。
クール星人
クール星人は、バンダイの、通称「ガシャポン」と呼ばれている、カプセル入り簡易自販機で販売されていた、極小スケールフィギア商品枠で展開された「HGシリーズ」の一つ、「HG ウルトラマン26 ウルトラマンコスモス登場編」でラインナップ販売された、クール星人を使用した。
その理由としてはいくつかある。
まずは、ぶっちゃければ『ウルトラセブン』の第一話という話が、『光の国から愛をこめて』的に絶対外せない、金字塔作品であるにも関わらず、そこでの敵キャラであるクール星人が、そもそもバンダイソフビでは発売されていないという事実がある。
ない物は使えない、これは仕方が無い。
次の理由としてはクール星人が、巨大化する敵ではないということ。
『光の国から愛をこめて』のビジュアル的なポイントは、簡易特撮セットジオラマでの、ウルトラヒーローと怪獣フィギアの構図である。
そのため、基本的に各種特撮セットは、怪獣ソフビのスケールを基準に作ってあるので、ガシャポンなどの小型アイテムでは、そのセットで撮影できなくなってしまうのだ。
ガシャポンサイズの怪獣達に合わせてセットを作るのは、筆者の技術では、正直無理である。
けれど、そもそも巨大化しない星人においては、セットのスケールとの兼ね合いがない。
次の理由としては、クール星人が、操演型の宇宙人であることが挙げられる。
筆者がガシャポンをなるべく使いたくない理由の一つに「ガシャポンフィギアは可動せず、ポーズが固定である為、あらかじめ完成しているポーズのシーンしか再現できないから」というのがある。
これが、人間が中に入って演技する宇宙人や怪獣であったら、それこそガシャポンで再現しているポーズしか撮影できないわけなのではあるが、操演で演出されているクール星人は、せいぜいが昆虫のような足を、プラプラさせる程度しか表情に変化はない。
クール星人は固定ポーズのHGでも充分に表現可能なキャラであったから、今回はあえて、HGガシャポンのクール星人を選択してみた。
最後の理由としては、ウルトラデザイナー・成田亨氏のコメントではないけれど、「基本的な約束事は決めよう。しかし、それに縛られることを絶対的な決まりにはしたくはない」と思っていたので、早い時期のうちに例外を作ることで、今後のアイテム選択へのプレッシャーを早く取り除いておきたかったからというのが、一番大きな理由だったかもしれない。
さて、言い訳御託はこの辺にして(笑)今回使用したHGシリーズのクール星人だが、親指大の大きさのアイテムにも関わらず、その緻密な出来栄えとクオリティは、さすがとしか言いようのないレベル。
この手の安価ミニサイズフィギアのバブルは、西暦が切り替わる直前にシリーズを開始した、フルタ製菓の「チョコエッグ」が巻き起こした社会現象を基盤に始まった。
海洋堂の松村しのぶによる原型フィギアは、それまでの食玩の「おまけ」という概念を覆し、整備化された中国工場との連携システムを使い、一気に2000年代の食玩・ガシャポンのクオリティを上げる原動力となった。
その結果、200円・300円という安価で、一昔前の数千円の価値を持つフィギアが大量に流通する、夢のような時代になったわけで、小学生の頃に怪獣消しゴムのガチャガチャを必死でまわしていた筆者からしてみれば、ただただ「良い時代になったなぁ」と感嘆するしかないのである。
(もっとも、僅か数年後には中国の経済がバブル発展し、中国工場が「安価な高品質工場」ではなくなったため、フィギュアバブルは弾け、軒並みフィギュアの価格は高騰をはじめたのであった)
HGクール星人の出来はほぼ完璧で
他のHGアイテムではその生産・流通システム上仕方なく発生する、パーツ分割の問題すらもなく、ただそのままに撮影に使用している。
ウィンダム
セブンのカプセル怪獣ウィンダムはバンダイウルトラ怪獣シリーズソフビを撮影に使用した。
そもそも、セブンに登場したウィンダムは、バンダイソフビシリーズでは、最初期の1983年に商品化されているが、さすがに20年以上前の造形ゆえか、今の目で見ると厳しい出来といわざるを得ない。
そんな中、2006年に放送された『ウルトラマンメビウス』の中で、防衛チームの操る怪獣という設定でウィンダムが「マケット怪獣ウィンダム」として登場し再商品化された。
デザイン・造形的には、セブン登場時と特に変わるところがなく、今回はメビウス版のウィンダムソフビを、セブンの劇中再現シーンに登場させた。
造形・塗装共に、過去ソフビ怪獣界で、最高峰であるウィンダムの現行商品なので、カスタム・リペイント共に一切施していない。
全身単一な銀色ではない、ポイントを押さえた黒のスプレーの吹き加減や、ウィンダムといえばこれしかないだろう、というポージングまで、一切文句のない出来栄えになっている。
ウルトラホーク1号
ウルトラ警備隊の象徴とも言うべきウルトラホーク1号の演出では、主にバンダイの食玩「ハイパーウルトラメカ」シリーズの、ウルトラホーク1号を主に使用している。
このシリーズは、どれもハイディティール・ハイクオリティであるが、特にこのホーク1号の出来は素晴らしいものがある。
その完成度は、バンダイがこの商品の数年前に、マニア向けに販売展開していた「HGメタルメカコレクション」「超メカギャラリー」といった高価格帯商品に一歩もひけを取らない。
唯一のネックは、三機のメカに分離合体が出来ないという点ではあるが、数百円という価格を考えて、その上で、タンポ印刷で施された丁寧なマーキングまでをもトータルで見るとき、そのネックを補って有り余るだけの商品価値はあると言い切れる。
今回の『ウルトラセブン』シリーズ再現でホーク1号の出番は、ほぼこのアイテムが勤める事になるとは思うが、分離合体のシーンではHGメタルメカコレクションのウルトラホーク1号を使うことになるし、他のアイテムを使うケースも出てくるかもしれない。
ポインター
ウルトラ警備隊のパトロールカー・ポインターも、バンダイの食玩「ハイパーウルトラメカ」のポインターを使用。
ポインターのアイテムは、放映当時のマルサンプラモデルの時代から、幾多のアイテムが発売されているが、曲面を含む微妙な多面構成のメカにも関わらず、歴代のどのアイテムも、出来は良いものが多かった。
ポインターは、放映当時から人気メカではあったが、現代になってもその人気は衰えず、スケール模型メーカーのフジミから1/24スケールの精密なプラモデルや、ユニファイブからは1/32国際スケールのミニカーなども発売されていて、千葉のガレージメーカー・模型道楽からもメタルキットが展開されている。
バンダイも、今回使用した食玩の他にも、HGメタルメカコレクション、キャラウィール、ポピニカ、ミニポピニカ・ビーグル5、ウルトラメカセレクション、HGウルトラマシンクロニクル、ビットチャージャーなど、多彩なカテゴリでポインターを発売している。
今回の食玩ポインターは、およそ1/40スケールのプラスチック製。
上で紹介したアイテム群と比較して評価をするならば、決してクオリティの高いアイテムではないが、何よりも安価であるし、対費用効果で考えれば優れ物である。
ボディのカラーリングやマーキングは既に印刷されているし、ホイールの赤もしっかり塗装されている辺りはポイントが高い。
今回はこの好アイテムを、無改造・無塗装で使用している。