トイマークという、円谷が出資した玩具会社の玩具パッケージに、英二監督がメッセージを残したことがあった。
「ファンのみなさまへ
いつも励ましの手紙とご声援ありがとう。
みなさんに応える為に、私もますます元気に、新らしい夢を追いかけています。
エッ? 「夢を追いかける…」だって?
そうです。丁度・昔の人が、空を飛ぶことを夢見たように、今の私も、みなさんがアッと驚くような
素晴らしい特撮映画をつくろうといっしょうけんめいなのです。
みなさんもいろいろな夢をおもちでしょう。
大きな夢、小さな夢、限りない未来に向って、どんなとっぴょうしな夢でもいいのです。
夢だなんて決して馬鹿にしてはいけませんよ、空を飛ぶことも、水の中を潜ることも、みんな最初は夢でしかなかったのですから……。
さあ!みなさんも私といっしょに、新らしい夢をおいかけてみませんか?
円谷英二」
トイマーク玩具 メッセージ
英二監督が、子ども達に望んだ夢とはなんだったのだろう。
自分達が生きた時代の、遥か未来を歩くだろう子ども達に、託したかったことはなんだったのだろうか。
日本はこのとき、戦後20年を経過したばかり。
愚かな悲劇を繰り返してはならない、戦後の「未来の日本人」達に、何を託そうとしていたのだろうか。
想像力。
それはきっと、どんな民族や人種や、地位や生まれや階級や争いをも、超えることが出来る、人の唯一の力。
その中で飛翔することが、人に残された最後の可能性。
それを伝えるために、戦争という時間を生き延びた大人達が、握りしめてきたバトンを、次の時代に生きる子ども達に手渡すために、東京・世田谷の片隅にある、小さなプロダクションに集まった。
そして、怪獣達は息を吹き込まれた。
1966年1月2日。
日本テレビ史上初の、空想特撮シリーズ『ウルトラQ』放映開始。
光の国への道が、切り開かれた瞬間であった。