――自分は今回、安藤監督とお話させて頂くという意味もあり、また再現特撮を行うという意味もあって『あなたはだぁれ?』を4回繰り返して観させていただいたんですが、そこで気づいたのは、カメラを意図的に振ることで、小林昭二氏演ずるサラリーマンの不安性を描写する。しかもそのカメラの移動も、主人公の主観視線を意識したパンニングと、客観視線を意識したドリー撮影を使い分けて、常に不安感を増幅させるコンテがそこにありました。

安藤 そうそう。

『ウルトラセブン』『あなたはだぁれ?』より

――そしてまた画面設計においては、闇と光のコントラストを強く意識させつつ、ロケである団地を、画としてそこに緩急やセンテンスを盛り込むために、赤い電話ボックスを不安定な位置に設置してみせたり。

安藤 そう、あの電話スタンドは特別に作らせたんです。

『ウルトラセブン』『あなたはだぁれ?』より
『ウルトラセブン』『あなたはだぁれ?』より

――また、その流れで色の配置でいえば、フック星人のビジュアルも含めて、ストーリー全体がモノクロのコントラストが強調されている中で、その電話ボックスとセブンの赤だけが、強調されてインパクトが残るという色彩設計でした。

『ウルトラセブン』『あなたはだぁれ?』より

安藤 そうなんです、その通り! だからあれ(電話スタンド)に関しては、初めての監督作品で言い辛かったんだけど『これ作ってくれ』と作らせたんだよね。僕は演出的には、自分は佐分利信さんの影響が大きいと思ってる。銀座プロ(主催・山村聡)で僕をチーフ(助監督)にしたのも佐分利さんなんだけど、山村聡にしてみたら(安藤監督は)自分のプロのスタッフだから、『(安藤監督を)チーフにする』って言い辛いわけ。で、佐分利さんが監督のとき、(山村氏が)『チーフがいない』って言ったときに、佐分利信が『安ちゃんでいいよ』って言ってくれたのがきっかけだったんだよ。だから僕は、実際には銀座プロに入って一年もやんないうちにチーフになったんです。それで山村聡ってのはブルーリボン賞とったりはしてたんだけど、普遍的な、普通の監督なんですよね。カット割とかも非常に普通過ぎたり。

――『風来坊先生』(1964年)辺りは、当事かなり評価はされてましたけど。

安藤 確かにあれはいわゆる学園物の走りだったからね。でもあの頃は、監督とかの助監督イジメが酷かった時代でねぇ。だから僕はそういう意味では、佐分利信とか、藤原銀次郎島津昇一なんかのね、本当に映画育ちのバリバリに、それこそイジメぬかれてるわけね(笑) しかも当事はスクリプターなんかも監督をいじめるわけですよ。あの人達は数字相手だから、表現じゃないから、演出とかにコンプレックスがあるからね。僕なんかそれこそ『(助監督には)人権はねぇ』ってはっきり言われたわけだから(笑)

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