「そうか。初期のソフビの頭部をゼットン星人に使う代わりに、最後期のソフビの頭部を使って、二代目ケムール人も作れるかもしれない」二代目ケムール人は、先ほども書いたが、ボディはダダの物を使っている(近年の書物では、新規造形と言い切っている物もあるらしいが、専門家の方の意見を聞くと、胸の逆V字のモールドの造形継ぎ目などから、少なくとも型はダダと同一の物を使用していると思われる)。
そして、旧バンダイウルトラ怪獣シリーズでは、やはり同じ2000年に、新規造形で(ダダは既に一度、旧造形で発売されていた)リアルな造形で、ソフビが発売されている。その、新規造形版ダダのボディに、最後期発売分のケムール人の頭部を乗せれば、簡単に「二代目ケムール人」の完璧版が出来るのではないか?
この発想は、後で痛い目を見ることになるのだが(笑)
とりあえず、まずは「フルアクション ゼットン星人究極版」を、目指すことにした。『フルアクションフィギュア ゼットン勢人 究極版』まずは、バンダイ旧サイズウルトラ怪獣シリーズのケムール人ソフビの、首を切り出す。ケムール人の首は、胸元までワンセットの被り物になっていて、そこへ末広がりで頭部のシルエットが形を作っているのだが、ゼットン星人は、等身大ケロニアの首に頭部を繋げる関係上、首の下部が絞られている。なので、切り出したケムールの首も、裾に何か所か切り込みを入れて、改めて瞬間接着剤で絞って接着し、予め隙間をパテで埋めておく(写真・E)。
次に、バンダイの「S.H.Figuarts カメラ男」だが、このフィギュアは頭部を外せば、黒のスーツにネクタイ、白手袋と、ゼットン星人の素材としては申し分ないスタイルをしている。しかし、今さっき上で「バンダイのケムール人ソフビと同じスケール」とは書いたが、こちらは元がアニメキャラクターであるので、意図的に体型が華奢で、手足が(『ルパン三世』のキャラのように)細いアレンジが施されているので、ケムール人の頭部を乗せると、ちょっと頭でっかちになり過ぎてしまうウィークポイントもある。だが、他に選択肢もないのでこれを採用。これをまず、ゼットン星人の状態、すなわち等身大ケロニアの状態へカスタムする。
主な改修ポイントは、手首と首元。そこへ、エポパテを盛って、形を整えていく。たまに、ガレージキット等で、このゼットン星人が造形される際、頭部の角度はともかくとしても、手首もシンプルな「怪人の手袋」にしか造形されないことが多いが、実際は、この手袋は等身大ケロニアのままだった(ムラマツキャップに「岩本博士!」と起こされるカットや、マルス133で撃たれて、胸を抑えるカット等で、明確に「等身大ケロニアの手、そのまま」であることが分かる)ので、等身大ケロニアで造形されていた、手首のささくれやめくれた皮膚も再現する。
また、ソフビという商品の仕様の関係から、広がりが小さめで納まっていた「頭頂部の触角の先のラッパ」も、一度ソフビのを切りおとして、エポパテで新たに造形し直しておく。あと、ちょっとした(しかし、忘れちゃいけない)ワンポイントとしては、岩本博士らしい、エレガント(笑)な「左胸ポケットの、白いハンカチ」も、細かく造形しておく(写真・F)。
さて。緊張もするし、一番大事なミッションである「頭部の据え付け」である。ゼットン星人が登場する、数十秒のカットを、何枚もキャプチュアして、モニターとフィギュアを照らし合わせて、首の取り付け角度を調整する。エポパテは、硬化するまで数時間かかるので、一時間以内程度であれば「やっぱ、もうちょっと右へ」とかは可能である(笑)
そうこうして、もうこれしかないという角度が決まり、後は硬化を待つ。硬化後は塗装。元のソフビが、ゼットン星人劣化時の色味を再現しているとはいえ、商品そのままでは意味がなく、しかも、パテで作った首との接合があるのだから、改めて塗り直す。まずは頭部。目のレールの、中央を白、顔との壁を51薄茶色で塗ることで、ソフビの元のクリーム色とで、三段階のグラディエーションを施す。頭部全体は、黒立ち上げで14ネイビーブルーをメインカラーに設定。71ミッドナイトブルー等も足して、ドライブラシで、劣化した色味を目指す。手首・首は「等身大ケロニアとして、当初造形塗装された物が、急遽ケムール人の頭部とくっつけられる事態に陥った」事実を前提とするために、まず等身大ケロニアの色で塗り、その上でケムール人の頭部との整合性のある色を、被せていくという手順を伴った。具体的には、まずは黒で塗り、そこへ16濃緑色と66デイトナグリーンで薄らドライブラシをかける(ここまでが、等身大ケロニア)。そして一番表側に、14ネイビーブルーと71ミッドナイトブルー(ゼットン星人の色)をブラッシングして、頭部と統一した(写真・A B)。
こうして完成したフィギュアを、再現画像で使用してみると。やはり頭部の大きさと身体の華奢さは目立ってしまうが、かといって現行サイズの、ウルトラ怪獣500のケムール人頭部では、絶対に小さくなりすぎていた為、ゼットン星人の特徴を出すのであれば、今回の組み合わせがベストであろう(写真・G H I)