前回は「出渕裕ロングインタビュー4 出渕裕とバイオマンとチェンジマンと」

――これはデリケートな質問に立ち入ってしまうことになってしまいますが。今の風潮として、例えば数十年前に出渕さんが、意味を持たせて繋いだ線や面のデザインが、それこそ今お名前があがったカトキさん等によって、リファインされてフィギュアやガンプラになっているのですが、その辺りはどう捉えられておられますか。

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場した出渕氏デザインのジェガン(ガンプラはカトキ氏リファイン)

出渕 全然構わないと思いますよ。一時期カトキ君が、僕がデザインした物を「リファインデザインするんで」ってわざわざ連絡くれて、「(出渕氏に)見て欲しいんですけど」って。「え? カトキ君頼まれたんだから、それでいいじゃん」って言ったら「いや、出渕さんに見て欲しいから」って、当時ファックスで送られてきて。送られてきたら(意見を)言わなきゃいけないと思って言うじゃないですか。そうするとカトキ君が「え? そうですか?」って(笑) だったら聞くなお前!っていう!(笑) ただ、聞くっていう、カトキ君の姿勢自体は僕はすごく良いと思ったんです。カトキ君はやっぱり「オリジナルのデザインをやった人へのリスペクトを、僕はしてます」っていうのを強調されてるんで、それは大切だと思うから、気持ちは分かる。でも「じゃあこうかな?」って言ったら「えぇ? そうなんですか?」って、だったら聞くなっていう(笑) 一時期マスターガンダムをカトキ君がやったときも「見て欲しいんです」って送られてきて。「ちょっとグリフォン(『パトレイバー』で出渕氏がデザインした黒いレイバー)っぽくなっちゃったんですけど、だいじょうぶですか?」って言ってきて。僕は「全然だいじょうぶだよ。だってガンダムの顔が付いてるじゃん」と答えました。

――カトキさんもそこは、自覚があったんですね。

出渕 うーん、一応それを作った人に、こうなっちゃったんですけどっていうのは分かるんだけど。色、黒で塗ったらそうなる(グリフォンに似る)じゃん! っていう(笑) 「じゃあ白く塗っておけ」っていう(笑) あと、大河原さんにも言われたことがあって。『機動戦士ガンダムF91』(1991年)の時に、ヴェスバー(ガンダムF91の背部に設置された武装)っていうのがありますよね。(大河原氏と)会った時に「出渕くーん、出渕君、なんだっけ、『パトレイバー』の大きな羽根みたいなやつ」「あぁグリフォンですか」「あぁ、アレちょっと僕、参考にさせてもらったから」「は? どれ?」「これ」「え? これ全然違うじゃないですか。羽根じゃなくて武器ですし。いいじゃないですか」って言って。

――難しいと思うのは、そういう部分で自分が作った物に拘りを持つ人もいれば、職人的に割り切ってらっしゃる方もおられるわけですよね。

出渕 そうですね。ある程度出来た、既にある物を、模型にアレンジするっていうカトキ君の仕事みたいなものは、全然ありだと思いますね。彼は解釈とか、見えないところとか、細かいディテールとかやってくれるから、それはいいやって思うんですよ僕は。ただ『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)の時に、その前に『Zガンダム』の後番組をやろうとしたときに企画で描いた物が、ポシゃっちゃったんですよ。そしたら今度は正式な『ガンダムZZ』のコンペみたいなのが来たんで、ある種あの時は怒りモードでやってたんですけど(笑) 僕は『Zガンダム』の、モビルスーツの使い方(演出)にあまり納得がいってなかったんです。ジオンの後継のアクシズが、ガザCでいいの?っていう。ジオンだったらマラサイとかハイザックを使うべきじゃない? ディジェとかも、アクシズが使うんだったら分かるけど、それらを連邦軍が使っておいて、アクシズがガザCはねぇだろうっていう。

『機動戦士Zガンダム』よりガザC

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