『ウルトラセブン』という祭りのあとにさすらいの日々を

市川森一
佐藤幹夫

『私が愛したウルトラセブン』は1993年にNHKで、二週連続で放映されたスペシャルドラマである。
このドラマでは、1967年の円谷プロを舞台に、『ウルトラセブン』(1967年)という夢を追いかけたスタッフやキャストの姿が、実際に当時『ウルトラセブン』の脚本を執筆していた、市川森一氏の手で描かれる。

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モロボシ・ダン役に松村雄基、アンヌ役に田村英里子。満田かずほ監督役に塩見三省、金城哲夫役に佐野史郎。市川森一役に香川照之、上原正三役に仲村トオル。他にも別所哲也、布川敏和、財津一郎が出演。円谷英二監督役は映画監督の鈴木清順という、豪華キャストで製作されたドラマだった。

二週に分けて放映されたこのドラマは、前編が『夢で逢った人々』というタイトルで、後編のタイトルが、そのものずばり『夢見る力』である。
場末の弱小プロダクションが 思わぬウルトラブームを巻き起こしてしまい、そこに集まった人々が、その中で必死に「夢」を作り、手に入れようとする群像劇としてドラマは描かれる。

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時代は70年代に差し掛かり、高度経済成長も終わりを告げて、社会にはベトナム戦争が暗い影を落とし、「正義」も「夢」も無くなっていく時代。
そこで『ウルトラセブン』という一つの夢の下で闘い、夢を追い求めていた人々がいた。
故郷・沖縄に苦悩する金城哲夫
役者ではなく自らが作り上げた 「アンヌ」という女性に恋する満田。
英雄としての虚像と、現実の自分の狭間で揺れるダン。
死への病を抱えながら戦う、もう一人の沖縄人上原正三
そして皆の夢を受け止め、かなえるために微笑むアンヌ……。

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「人は、夢見る力がないと生きていけない」
それは、市川森一氏が永遠に書き求めるテーマでもある。
人は見た夢を、必ずかなえる力まで備えているとは限らないが、それでも夢を見る力だけはないと生きてはいけないのだと、市川氏の作品は常に訴え続けている。
その上で、市川ドラマが徹底して「夢は信じれば必ずかなうのさ」などといった、凡百のドラマとは一線を画している要素とは「夢はどんなに信じても、現実に打ち砕かれる運命にある」である。

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「ウルトラを文学で研究する」などといった名目で行われる評論で、必ず市川森一作品は、キリスト教史観の作品として捉えられるが、それは、ザンパ星人やゴルゴダ星などといったネーミングと共に、キリスト教や聖書というものを、表層的にしか捕らえていない者が、ウルトラしか観ないで、ウルトラを論じようとした結果からくる、短絡的結論であり、実は市川氏は、自らが「僕はカソリックでもプロテスタントでもないですよ」と述べたように、氏は自身単独で聖書や福音書などを読み込んで、その解釈と受け止め方の形が、ドラマに反映されているのであって、その解釈の形やスタンスは、決して既存のキリスト教のそれではない。

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