正義も悪もない、緊急避難の物語
若槻文三
満田かずほ
有川貞昌
「誰! 誰なの?」
「私は、ある遠い都市から来たものだ。事故を起こして重傷を負っている。手当ては済ませた。このまましばらく、じっとしていれば傷は治る。それまでどうか、このままにしておいてくれ。誰も呼ばないでくれ」
「アンヌさん、ダンさん。私は地球人はもっと恐いものだと思っていた。こうして、命をとり止めることができたのは、あんたがた二人のあたたかい思いやりのおかげだ。ありがとう」
「こんな大きな宇宙の中に、地球と私たちの町が、一緒に生きることの出来る場所がないなんて、なんという悲しいことだろう……」
「こちらはペガッサ市。地球に軌道変更をお願いします。ペガッサ市は、動力系統に重大な故障をきたしました。宇宙空間都市ペガッサ市の市長室から送信しています。ペガッサ市は今から80時間の間、地球の軌道変更を要請します。ペガッサ市は、太陽及びその惑星の引力の影響を受け、現在ジグサグに動いていますが、やがて地球の軌道に入ります。したがって、動力系統の修理が終わるまで、地球の軌道変更を要請します」
「ペガッサ星が消滅する前に、脱出したペガッサ星人が、宇宙空間に素晴らしい大都市を建設した。それが、宇宙都市ペガッサ市だ。地球から見ればけしつぶのような大きさだが、都市をつくっている物質の密度は地球の約8万倍だ」
「大変だアンヌ! ペガッサ市は見かけより8万倍の大きさだ。それが地球とぶつかるんだ!」
「えっ…」
「地球は木っ端微塵に砕けるぞ!」
「何を慌てているんだ? 彼らの言うとおり、しばらく地球の軌道を変えてやればいい。 ただ、それだけのことじゃないか」
「バカを言え。地球の軌道をどうして変えるんだ!」
「エッ…なんだって、オイ! 地球は自分で動けないのか! 勝手に動いている物の上に、人間は乗っかてるだけなのか? それだったら、野蛮な宇宙のほとんどの星と同じじゃないのか!」
「状況は最悪なり。目標は予定通り、新爆弾で破壊する。ウルトラ警備隊はペガッサ市に危険を通告し、市民の脱出を援助。安全に地球まで誘導せよ」
「あ! 隊長! 見えました!」
「あ、あれだ! あれが宇宙空間都市・ペガッサだ」
「ペガッサ市の危険が迫っています、直ちに脱出してください。我々が安全に地球に誘導します。われわれはやむを得ずペガッサ市を破壊します。脱出してください。そして、再び宇宙に大都市を建設する日まで、地球に移住してください。地球はあなたがたを待っています。地球は美しい星です。早く脱出してください! 我々が地球に誘導します!」
「残念だが……地球が生き残るためには……こうするより……」
「隊長……」
「ペガッサ爆破時刻、五秒前……」