デザイン・造形面で言えば、キュラソ星人はケムール人のバリエーションでもあり、興味深いキャラではあるのだが、この話を扱おうと決めた段階では、キュラソの立体物は数えるほどしか商品がなかったのも実情である。
キュラソで立体化というと、他に思いつくのは、今回演出に使用したもう一つのアイテム、食玩「ウルトラ怪獣名鑑」のヴィネットで、ガソリンスタンドでガソリンを飲む、キュラソ星人のシーンを再現した、「宇宙囚人303」ぐらいであろうか。
今回使用したHGガシャポン版キュラソは、シリーズ後期の作品でもあり、造形・塗装ともに、このサイズでは完璧。
商品そのまま、待ったく手を加えずに、撮影に使用している。
(怪獣名鑑紹介)
一方、食玩の「宇宙囚人303」は上記したようにヴィネットタイプのフィギア。
ヴィネットでは物語冒頭で、ガソリンスタンドを襲い、ガソリンをむさぼり飲むキュラソ星人が立体化されており、むしろこのヴィネットは、このシーンの再現にしか使えないというくらいに、完璧にシーンを再現している優れものアイテムである。
HGガシャポンのキュラソと、食玩のキュラソでは、体色の解釈が若干違った塗装に仕上がっているが、筆者のカット割では、その違いが目立つ形では演出されないため、今回はこちらも無改造・無塗装で撮影に使用している。
宇宙ステーションV3
地球防衛軍の、宇宙空間最前線の護りの要、宇宙ステーションV3は、バンダイ系列のプレックスが2008年にミニフィギュアで展開販売した、ウルトラメカニカルコレクション ウルトラ警備隊でラインナップされた、宇宙ステーションV3を撮影に使用した。
2008年は、ウルトラ系の食玩やミニフィギュアの転機とも言える年になった。
折からの、中国人権費事情の急騰、そして世界規模の原油価格高騰は、それらを安価にコントロールすることで成り立っていたフィギュア業界を直撃。
各フィギュアメーカーは、コストとクオリティと、ブランドイメージのバランスの、微妙な舵取りを要求されることになった。
バンダイの場合、そしてウルトラの場合は、安価コストでだからこそ成立していたアイテムが多く、そこでは当然、シリーズ継続を抜本的に見つめなおすリストラクションが行われたのだろうが、過去のキャラクター遺産に頼るケースが多いウルトラでは、既にメジャーアイテム・メジャーキャラはどのシリーズでも出し尽くした感が強く、それゆえ、経営を圧迫してまでシリーズを継続するメリットも少ないと判断されてか、2008年は、そういったウルトラ系バンダイミニフィギュアや食玩が、相次いでシリーズの終了を迎えた年でもあった。
そんな中、隙間商売なのか絞りかすを押し付けられたのか、バンダイ系列企業であるプレックスというメーカーが、ウルトラ警備隊メカのミニフィギュアを発売するという流れになった。
中国人権費も、原油価格も関係ないレベルで言えば「ウルトラ警備隊のメカをブラインドミニフィギュアで」という企画自体、一年前に本家バンダイが、HDMウルトラ超兵器シリーズの第一弾でやったばかりである。
このプレックスの、ウルトラメカニカルコレクションという商品の存在が「ウルトラメカミニフィギュア」という商品カテゴリが重荷になったバンダイが、今後HDMシリーズにおけるメカアイテムの発売を放棄して、下方系列企業プレックスへ押し付ける形になることを示唆するのか、それともプレックスの「読みの低さ、甘さ」を証明しただけなのか、筆者にはそこまで判断は出来ないのだが、もともとバンダイは、そのグループ内では連携の拙さは有名であったので、ただバッティングしただけ、というところが真相なのかもしれない。
そのバッティングの甘さは、奇妙で失笑を禁じえない連鎖を生んだ。
筆者は常々、以前から「どうせウルトラ警備隊メカを出すのなら、ホーク1号やポインターはお腹一杯だから、そろそろ宇宙ステーションV3を出してくれ」といい続けてきたが、それがある意味で叶えてもらったのが本アイテムであろう。
そういう意味では感謝することしきりなのだが、実はこの、プレックスのアイテムが発売した直後に、本家バンダイから「円谷倉庫」なるミニフィギュアが発売されて、そのアイテムの中に、宇宙ステーションV3が存在していたのだ。
もはや、グループ内の仁義無き嫌がらせ合戦のようにも見えてしまう、このエピソードなどは、はっきりと、現在の迷走ぶりを浮かび上がらせているのではないだろうか。
そういった経緯で、いきなり二種のアイテムから選択を迫られたステーションV3だったが、事前に聞いていた情報を元に、筆者は今回プレックス製を選んだ。
プレックス版は、他のホークなどのメカは(HDM版と差別化しようとしたからか)、妙に筋彫りなどが主張をしすぎていたのだが、この宇宙ステーションV3とハイドランジャーだけは、ブロップに忠実に作られている。
(だからやっぱり、ホーク関連のあの露骨な筋彫りはプレックスの自己主張なのだろう)
円谷倉庫の方は、他アイテムと同梱ということもあって、小ぶりだしモールドも甘い。
以上の理由で、筆者はプレックス版を選んだのであった。
コスト軽減のためであろうか、マーキングは塗装ではなくデカール。
それも、水に浸して貼るタイプという、筆者のような中年には懐かしいタイプの水転写式。
扱いにそれなりの慣れと技術がいるため、今ではキャラクタープラモでは、敬遠されてしまう水転写デカールだが、質感などは一番印刷に近いので嬉しい。
アイテム自体は形状も正確で、細かいディティールも省略されていないので好感が持てる。
ようやく、警備隊メカが揃いつつあるようになったので、今後は筆者の再現特撮におけるメカ描写も、充実していくと思う。