しかし、そこはガブスレイに限らないが、変形モビル・スーツが跳梁跋扈した『Zガンダム』で、曲がりなりにもその変形が再現されたガンプラは、1/100 ゼータガンダム、1/144 ギャプラン、メタス、ハンブラビ、1/220 メッサーラ、1/300 サイコガンダム、サイコガンダムMK-Ⅱぐらいで、外野視点で言えば、アニメサイドとバンダイガンプラサイドで、構想の擦り合わせが上手く出来ていなかった感は否めない。
その典型例がこのガブスレイであるとも言えて、HGUC ガブスレイは、当時より進化したマテリアルや設計技術の力を得て、変形することが可能になったが、実際は上でも書いたように、強度や材質に負荷がかかり、変形プロセスも分解と再組み立てという「変形」とは言えない仕組みで成り立つ、一言で言えば「20年後のプラモデル技術でも無理がある変形ギミック」であり、今回もミッション的には「どうにか完成にこぎつけている」代物。
確かに、変形前と変形後はアニメ設定に忠実であり、ガンプラは玩具と違うので、そうそう頻繁にガシャガシャ変形させる商品でもない。
そういう意味では「均整の取れたヒロイックなモビル・スーツ形態」と「グロテスクな昆虫を思わせるモビル・アーマー形態」を、一つのキットで再現できるこのHGUC版の、努力と結実には惜しみない拍手を送りたい気持ちは充分あれど、「この強度」と「この素材の組み合わせ」では、再現画像撮影のテンポとスピードの中で、幾度も変形を繰り返させるには不安が強すぎた(ならば変形前と変形後を、それぞれまとめて撮影すればよかろうという正論も勿論なのであるが、なんというか大賀さん、不可能な範囲でない限りは「順撮り(シーンの順番通りに撮影していく」をやりたい癖があるもので……)。
以上のような理由で、今回はモビル・スーツとモビル・アーマーとの、固定状態をそれぞれ紹介しているわけだが、キットの話に戻れば、今書き記した「変形キットとしての脆弱性」さえ目を瞑れば、しっかりHGUCの及第点には達している佳作ではある。
モビル・アーマー時用の専用スタンドも付属し(ギャプラン辺りからスタンド付属が恒例になってきたので、コストの問題でバンダイはアクションベースをガンプラ用に特化させたのであろう。バンダイのアクションベース発売は、このキットのちょうど1年後の2006年12月である)、昆虫型飛行形態で飾りたい派にも親切にできている。
キットの差し替え作業のプロセス次第では、『Zガンダム』劇中でジェリドのガブスレイがやってみせた「足だけ変形させて、フレームだけを突出させた状態」も再現できる(イマドキの設定によれば、あれは「ケンタウルス状態」と言うとか言わないとか……)。
少なくとも、モビル・アーマー単独での出来も秀逸で、この時期のバンダイの設計陣が、この難敵相手に必死に苦労してここまでの仕様に持ち込んだ功績は、手放しで称賛されて良いと思う。
何度も同じことを書いてはなんだが、元々の変形デザインに無理がありすぎたのだ。
『Zガンダム』劇中で、「ジェリドが一番輝いていた時に乗っていたのはどのモビル・スーツの時か」は、たまに『Zガンダム』ファンの中で取りざたされる話題であるが、まぁそこで、お荷物状態だったハイザックや、いきなり乗って出てきて撃墜されて死んだ棺桶のバウンド・ドックを挙げる人はまずおらず、たいていのジェリドファンは、この機体かバイアランを筆頭に挙げる。
戦場で想い人になり、戦線でもパートナーだったマウアーと共に乗り込み、そのマウアーを殺されて、激昂したジェリドのガブスレイ無双のシーンは、印象深いものがあった。
キットを2つ購入して、それぞれ形態固定で組んだからこそ、破損の恐れなく撮影が進んだわけであり、そういう意味でも『ガンダムを読む!』の再現画像って、地味にコストが高いんですよ(笑)
また、それらと、今回のメインの紹介が終わった後で、「撃墜されたジェリドのガブスレイ」のシーンを再現すべく、モビル・スーツ形態の方を最終的にクラッシュモデルにした(さすがにクラッシュ状態だけのために、さらにもう一体買う余裕はない(笑)「順撮り」論で言っても、ガブスレイのラストカットだし)。
このクラッシュモデル加工の時だけは、キットがムーバブル・フレームを再現してくれていてありがたかった。面倒なジャンクパーツを切断面に詰め込まなくても、中のフレームがそれらしく見えてくれる。
キットの色分けは中期のHGUCの並みといったところだったので、見栄えを考慮してアニメ設定準拠で、必要最低限な箇所に追加塗装を施した。
上でも書いたように、バーニア類の中の赤と、肩アーマーのバーニア(?)と、脛アーマーの赤をモンザレッドで塗装した。肩アーマーの赤い丸印には艶消し黒も追加した。
現行のバンダイガンプラHGUCは、2022年現在まだ『Zガンダム』登場モビル・スーツをコンプリートしきれていないが、ファンならば抑えておきたいキットではある。