富野由悠季と樋口雄一と「アレー」

――私たちのこういった仕事もまた、当時の方々の証言を頂きつつ、資料を調べつつ、考古学に近い物があります。その際に大事なことは、「1980年の『イデオン』と富野由悠季と樋口雄一」を考察しようとするのであれば、1980年を構成する全ての要素に視野を広げることなのだろうと学ばせていただきました。

樋口 ありがとうございます。そうですね。その後しばらく、富野さん仕事をされなかった時期がありますよね。ところが暫く時間が空いて、その後でお会いすると、すごく精力的に動いてらっしゃった。富野さんとは最近では二年に一度のサンライズさんの忘年会でしかお会いする事が無くなってしまいました。お会いすると最近は「どう?元気」とか色々世間話をしていますが、いつまでも元気ですごい作品を世に出していって欲しいです。

――この言葉が樋口さんにとってどのような価値を持つか分かりませんが、富野監督は以前、インタビューで「自分が死ぬ時が来たら、もう一度劇場版『The IDEON』(1982年)を観たい」と仰っていたそうです。

樋口 ほう。アレ(劇場版)はすごいよね。僕はちょっと、よくわかんなかったけど(笑) だってさ。今の若い子達が『イデオン』知っててね。「なんで?」って聞くと、ゲームの『スーパーロボット大戦』(イデオンはスーパーロボット大戦Fなどに登場)で知ってて「アレ(イデオン)出てくると、終わるんだよ」って言うわけ。で、僕はゲームやらないから分からないけれど、イデオンが出てくると、敵も味方も壊滅しちゃうんだって(笑) そういう面白いキャラに成ったってことは、ありがたいことですよね。

――イデオンの持っていた無限性は、様々なアニメや漫画に影響を与え、近年でもパロディやオマージュという形でリスペクトされていますよね。

樋口 『スペース☆ダンディ』(2014年)「伝説巨大兵器アレー」の時も、監督に「イデオン“らしきもの”をデザインしてくれ」って言われて、「らしきもの」って(笑) サンライズにまずいんじゃないですかって言ったら、ボンズ(『スペース☆ダンディ』制作会社)の人が、「いや、もうサンライズにはOKをとってあります」って言われたんですよ。だったら心置きなく「らしきもの」を描いて、渡すときに「色だけは赤にしないでくれ。赤にすると似すぎるから」って言って渡しました。先方は「分かりました」って言って受け取ったのに、オンエアを観たら真っ赤になってて、それこそ「アレ?」ですよ。

『スペース☆ダンディ』伝説巨大兵器アレー
樋口雄一氏

収録 2018年1月8日 新宿東急ハンズにて

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