しかし一方で、富野監督は、『ガンダム』等の総監督作品では、メカやキャラなどのデザインの時にも、自分で描いたラフ画をデザイナーに渡し(特にメカの場合、“富野ラフ”と呼ばれてファンも多い)、メカなどの場合は、メカデザイナーから仕上がってくるクリンナップデザインが、デッサンの狂いまで正確に富野ラフのままという珍事も少なくなかったりする。
話が脇道に逸れないように続ければ、コンテに従ってデザインと作画が完成し、それらが撮影されるようになると、今度は声優たちによる“声の録音”(アフレコ)が行われる。
同時に、効果音や音楽なども作成、ダビングされるのだが、通常のアニメであれば、ここで画面の監督とは別個に、音響部分で全権を委託された音響監督という立ち位置の人物が居て、音響部分の全てを管理するようになっている。
その上で、仕上がってきたフィルムに、リミックスされた音声トラックがついて、作品は完成するのである。
となると、アニメには事実上、3セクトで監督と呼ばれる人間が、各々のテリトリーを仕切ることになる。
絵コンテや、映像の演出、撮影指示の“演出監督”と、作画の最前線で上がってくる原画や動画のチェックをして、演出意図どおりに描かれているかを管理して、自らも原画を描く“作画監督”と、視聴者の聴覚の部分を全て取り仕切る“音響監督”というのが、思い切りざっくりではあるが分かりやすい概念である。