宇宙からやってきた、異次元と現実世界の扉を自在に操るブルトンと、光の国からやってきた無敵の超人・ウルトラマンによる、シュールで多彩な超能力合戦が印象的な戦いは、草原土台・青空背景に、ウルトラバトルゾーンの科特隊基地を配置して、出来る範囲でその、トリッキーなバトルの再現に努めた。
いつもと違って、今回まず迷ったのは、そのバトルシーンのコンテであった。
上でも書いたように、ウルトラマンとブルトンの戦いは、まさに超能力合戦の様相を呈していて、まだそれが、動きのある動画であれば把握できる展開も、『光の国から愛をこめて』の再現特撮のような静止画の連続で、いったいその流れが、どこまで観ている人に伝わるかは、全くの未知数であり、そのためのコンテ作業は困難を極めた。
心強い要因は、本話特撮再現画像で登場するアイテムは、ブルトン、ウルトラマン、科特隊基地、戦車。戦闘機であるが、戦闘機以外の全てのアイテムの、サイズスケールがほぼ統一されていて、アイテムのサイズの違いからくる違和感を、払拭するための合成が、今回はほとんど行わなくて良いという部分だけであった。
むしろ逆に、なんらかの形で合成描画を施さなければいけなかったカットは、全30カットのうち20カットを越えており、飯島敏宏監督は、本当に合成による、特撮表現が好きだったのだなと改めて思わせられたのである。
まずは冒頭、科特隊基地の背後に現れるブルトン。
科特隊基地とブルトンのサイズがぴったりだったので、撮影自体は、単純に科特隊基地の背後にブルトンを置いただけ。フォトショ処理で青白い発光を描いてある。
ウルトラバトルゾーンの科特隊基地は、その台座部分が玩具然としていて物足りなかったので、台座部分の外壁と、スロープ通路や植え込みを、スチレンボードや鉄道模型用素材で作りこんでみた。
やがて迫る戦車隊は、ワールドタンクミュージアムの61式戦車。
空から迫る戦闘機は、チョコエッグ戦闘機第1弾のF-4 ファントムⅡ。
それらを迎撃するブルトンのビームは、ソフビに追加した真鍮線のアンテナから出ているように、フォトショで描画。まずはテキストで◎を大量に描いて、それをラスタライズ。複製に複製を重ねて、帯状に加工したものを使用した。
地を這うファントムは、何枚ものファントム画像を合成。
空を飛ぶ61式戦車は、個々に操演で撮影した物を合成した。
そしてハヤタの変身。
今回から挿入される、変身カットのベータカプセルUPカットは、バンダイの食玩「ウルトラマン変身アイテムコレクション」のベータカプセルを、屋外で撮影したものに、フォトショップ処理を施した画像を使用している。
ウルトラマン登場。
ブルトンの光線で、空中で止まってしまうカットは、別撮りしたウルトラマンフィギュアを、移動ブレぼかしをかけて合成。
回転しているカットは、飛行形態のフィギュアを撮影した画像を、何枚も複製して回転処理をかけて合成。
ブルトンの超能力で地下へ落とされたカットでは、飛行形態とアクションフィギュアの両方を撮影して、フォトショップで描画した煙の中に合成した。
ここまででお分かりのように、今回はほとんどが合成を必要とするカット。
続いて、自ら回転し始めるウルトラマンも、直立したポーズで三方向から撮影したフィギュアを、移動ブレぼかしの速度を、何回も変えて撮影した画像を何枚も重ね合わせて、最終的に回転しているようにみえるように合成した。
ラストはウルトラマンのスペシウム光線二連発。
空中のブルトンも(この大きさだと操演が無理なので)、別撮影したものを空背景に合成して、爆発炎を被せて表現した。
今回は30枚と、最近にしては特に多いわけでもない画像枚数であったが、合成処理の多さから、かかった手間はいつも以上の作品になった。