『ガンダム』始動

閑話休題。
これらの『ガンボーイ』富野メモが書かれたのが1978年の夏。
そこからの、『無敵鋼人ダイターン3』制作監督業務と並行する形で、富野監督は企画を練り上げていき、その前作『無敵超人ザンボット3』で組んだ安彦良和氏とももう一度改めて、共犯者になる前提で組み、松崎健一氏やスタジオぬえの協力を仰いでSF設定を(当時科学雑誌などで取り上げられていた、Gerard Kitchen O'Neill氏による、宇宙移民型ステーションの、スペースコロニーなどを舞台にするなど)練り込み、『ダイターン3』でリアルタイムに組んでいた、アニメメカデザイナーという肩書を始めて使った先駆者である大河原邦男氏を始め、それまでは『アルプスの少女ハイジ』(1974年)などの名作アニメの仕事が多かった渡辺岳夫氏を、主題歌と劇伴BGMの音楽に招き、世が大時代的ロマン芝居や、SFブームに浮かれる中を、着々とその準備に追われて、じっくりと「翔ぶ新作」は準備を整えられていった。

そして、『無敵鋼人ダイターン3』が放映終了に向かう中、CM枠で新番組宣伝用テレビスポットが流され始める。その中では、『ダイターン3』では主役の破嵐万丈を演じ、『ガンダム』ではホワイトベースの艦長・ブライトを演じる声優・鈴置洋孝氏の、硬質なナレーションが響いた。

「ガンダムが立ち上がる! 地球を守れ! ザクを倒せ! 戦場の中、一人の少年の死闘がはじまる。新番組『機動戦士ガンダム』」

そして。
『無敵鋼人ダイターン3』が最終回を迎えた、1979年3月31日、第40話にあたる『万丈、暁に消ゆ』のエンディングが終わった後の新番組次回予告で、声優・永井一郎氏のナレーションが、鮮烈な映像と共に、「『ガンダム』の時代の始まり」を告げたのであった。

「モビルスーツ、ガンダムが立ち上がった! ここは戦場。ただ、生か死か二つの世界でアムロは戦う。巨大なスペースアニメーションの幕が、今きって落とされる! 新番組『機動戦士ガンダム』 君は、青春の涙を見るか?」

その翌週、1979年4月7日。『機動戦士ガンダム』は、第1話『ガンダム、大地に立つ!』からスタートした。

富野由悠季「アムロをとおして、わたしたちにとっての現実と、新しく招かれる世界とは何か、を考えてみたいのです。」1979年4月

キネマ旬報社『ガンダムの現場から』

富野監督の想いと共に。

ブライト「民間人をホワイトベースへ急がせろ! ガンダムは!? あれにもやって貰おう。正規のパイロットだろうと何だろうと、手伝って貰わなければ」
アムロ「なんだ?」
シャア「認めたくないものだな。……自分自身の……若さゆえの過ちというものを……」

次回『シン・機動戦士ガンダム論!』。
満を持して社会に送り出された『ガンダム』を、当時の人々はどう受け止め、富野監督は何を思ったのか?
君は、生き延びることができるか。

次回「『シン・機動戦士ガンダム論!』第5回 『機動戦士ガンダム』オンエア開始・1」

(フィギュア再現画像特殊効果協力 K2アートラクション)

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