アムロ「こいつ……。う……」
シャア「ス、スレンダー! ……い、一撃で、一撃で、げ、撃破か! なんという事だ! あのモビルスーツは……戦艦なみのビーム砲を持っているのか!?……」

生々しいドラマを追求しようとした作品内で、空中変形と合体を取り入れることについて、富野監督は放映中当時(雑誌『アニメック』1979年6月6号)から難しさを語っている。

富野 空中合体は可能っていうことにしてますが、実際の今の戦闘曲面でいきますとそう特殊な状況に徹しきれなかったために使っていません。例えばですね、ある戦闘が始まっちゃってからガンダムからガンタンクへ換装している状況っていうのを例えばその、まあ 結局これも空中ドッキングをさせるみたいな話まで出てきて、やらざるを得なくて、やってもみたんですよね。やっぱりあの瞬間ほど防備が無防備になることはないんですね。とてもじゃないけど、そういうことをやれないっていうのが現状ですね。

ラポート『富野語録』富野由悠季インタビュー

クローバー自身は、玩具問屋や小売店向けの宣材で「見てください!! 今、自信をもっておくるパーフェクショナルキャラクター!!」と謳ってみせたが、実際の売り上げは振るわず、当初52話予定だった放映期間が、スポンサー要請で43話までの短縮が決定した。
それとほぼ同時に、『ガンダム』ではシリーズ後半の重要メカになる、ガンダムとの合体支援メカ、Gアーマーの登場が要求された。

その上で、やはり既存のロボットアニメのように、毎回新しい敵メカが登場して、ヒーローロボットにやられていくルーティンの方が好ましいのではないかとの要望も出された。
ガンダムブームの渦中ではしばしば誤解を招いたが、富野監督は決して「玩具屋を騙して、自分の創りたい表現を好き勝手にやる」を目指したわけでもなければ、むしろ富野監督本人はそれを否定している。作品としての『ガンダム』には、それまでのロボットアニメとは異なる斬新性が随所に溢れていたために見落としがちになってしまうが、「敵の攻撃(ザクマシンガン)を一切受け付けない防御力」「戦艦並みのビームライフル(劇中、シャアの台詞より)を、単独で運用するモビルスーツ」と、明らかにスーパーロボットの必須条件は満たした描かれ方をされているのだ。

そこは、富野監督は優れた演出家であると同時に、テレビアニメが作られる資本主義的システムを、どう活かすかの術にも長けた商売人でもあるのだ。

また、放映リストと登場メカを二点観測すると分かるが、第3クールでの、モビルアーマーが登場してからの展開では、第28話以降最終回までの16本で、ジオン側からの新型の敵メカが13体登場する。これはほぼ「毎週代わる代わるの敵メカが登場してはやられていく」通常のロボットアニメのペースと符合する。

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