アキラ少年

本話を特撮で再現するときに、絶対欠かすわけにはいかないと当初から悩んでいたのが、全てが幕を閉じるラストシーンにおいて、本話を象徴する画になった「アキラ少年(の霊)を背に乗せて飛ぶヒドラ」という画だった。

ある意味では、この画がなければ本話をビジュアルで再現する意味がない。

むしろ、この画がちゃんと再現できれば、本話はどのような構成・演出になっても、そうそう大外れな再現回にはならないだろうという、演出家としての見込みがあった。

しかし、それを再現するとなると、もちろんアキラ少年のフィギュアが必要になってくる。

必要とするフィギュアが、求めるクオリティのハードルは、決して高くはないとはいえ、『光の国から愛をこめて』独自のビジュアル路線との兼ね合いがあったため、その選択と入手は難航した。

まず、アキラ少年に「見立て」られるフィギュア、という前提で考えると、最低限、そのフィギュアは少年でなければならない。

そして、そのフィギュアの作風は、アニメ・漫画的過ぎてもいけないし、だからといって、リアル過ぎてもいけない。

また、出来ることなら、その少年フィギュアのファッションや雰囲気は、60年代後半から、70年代前半のイメージで造形されていることが望ましい。

見つかったからいいようなものの、普通に考えれば無茶な注文だと思う。

そんな都合の良いフィギュアなどあるものか、と何度もあきらめかけていた。

しかし、そんな筆者を救ってくれたのは、上記したHGガシャポンヒドラの項で書いた、「造形クオリティも塗装レベルも最高だが、一体これを誰がどんな目的で企画して、誰に向けて売ろうとしたのか解らない商品」だったのだ。

これだけありがたい思いをしておいて、今の物言いは失礼かもしれないが(笑)、結果、アキラ少年に見立てたのは、フィギュアメーカーとして、アニメ美少女萌えフィギュアから、特撮ヒーローアクションフィギュアまで、幅広く商品を展開しているメガハウスが、2003年に展開した食玩の「なつかしの情景 いたずら絵日記」でラインナップされていた少年フィギュアだった。

誤解のないように解説を加えておくと、この食玩はフィギュア単体の商品ではなく、複数のフィギュアを組み合わせたヴィネットで描写される「昭和の時代の、懐かしいいたずらの数々」を再現したミニジオラマである。

本話で、アキラ少年に見立てた少年のフィギュアは、ピンポンダッシュをして逃げる、まさに「いたずらの瞬間」を風景ごと切り取った、ヴィネットを構成するアイテムの一つだ。

「ディフォルメ過ぎず・リアル過ぎず」「60年代後半から70年代前半のイメージ」そういう意味では、まさにストライクゾーンど真ん中のフィギュアであるのだ。

「っていうか、これを喜んで集める層って、一体どんなフィギュアマニアなんだ?」などと、素朴でクリティカルな疑問をさしはさんではいけない。

やっぱり当然のように、あまりヒットなどしなかったからこそ、発売から数年も経ったこの再現の頃になってからでも、ネットオークションで全セット数百円という、拝みたくなるようなありがたい値段で入手できたのだろうから(笑)

そんな、まさに「フィギュアバブルの恩恵さまさま」で、成立しただろう商品ではあるが、バブルの真っ最中だけあって、その商品クオリティは無駄に高い(笑)

肌色の成形色の質感が絶妙で、造形も細かく、かつ躍動感を上手く再現している。

また、筆者にしてみたときには、このディフォルメさ加減が最良の要素だった。

筆者の再現画像における、リアル・ディフォルメのコーディネートは、怪獣とウルトラマンに関しては、バンダイのソフビとウルトラ超合金という、一定の基準があって、アイテムを選択しているということは以前よもやま話で書いた。

では、そこでランダムに登場する人間キャラは、ではどうなのかと改めて考えてみると、やはりそこは、特撮再現画像で今までで頻出してきた、人間キャラフィギュアの持っていたバランスに順ずることになっていくだろうと、あやふやながらの、一つのガイドラインが筆者内には形成されていた。

それはつまり、登場頻度で言えばバンダイの食玩、ハイパーウルトラマンシリーズから登場している、ハヤタとダンのフィギュアが持っていたバランスであるという前提だ。

シルエットを崩してしまうほどのディフォルメではないが、見た人が気味悪く思うほどのリアルではない。

言うのは簡単だが、そのさじ加減は微妙な間合いで成立している。

それゆえバンダイという会社内の、ハイパーウルトラマンのフィギュアという、一つの商品規格内であれば統一できるバランスでも、それが他のフィギュアカテゴリと連動するという性格のものではないわけである。

それがある種、幸運な一致を見る商品がないわけではない。

『光の国から愛をこめて』ならではのバランス自体が、筆者の個人的願望で成り立っているものだから、フィギュアファン、食玩マニア間の普遍的基準であるわけもなく、今回のように、先にニーズとするフィギュア形態(70年代の少年)があって、そこを優先して、フィギュアの海を彷徨った挙句に、さらにそこにディフォルメバランスまでをも求めねばならないというのは、これはもう、求める要素全てを備えたフィギュアに、たどり着く確率は天文学的に低く、その中で、それでも求めたフィギュアが見つかったというその事実を、筆者は純粋に僥倖と思わねばならないだろう。

このシリーズは、一応全種揃えると、それなりの数の少年少女フィギュアが揃う仕様になっており、それらを使うことでこれからの再現演出でも、少年や少女が画像に登場する機会が増えていくだろう。

例えば、今回の演出では「帽子を後ろ向きにかぶり、元気良く走っているポーズ」のフィギュアを、様々な角度から撮影して、それをフォトショップ上で切り貼りすることで、ヒドラの上にまたがっている、自然なポーズへと変更して画像を完成させた。

こういった使い方も含めれば、歴代のウルトラで少年が登場した名シーンが、いろいろと再現出来る可能性が増えたということでもあり、表現の幅が広がったということでもある。

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