開脚能力。広げればもっと広がるのかもしれないが、それは醜悪な図になると思うのでここまで。

それら全てをオールインワンで商品化しようというのは、ULTRA-ACT第一弾の初代ウルトラマンでさえ「最大公約数的イメージで」を前口上に使うことで、特にどの時代のどの造形の、というエクスキューズを破棄して、商品化に踏み切ったわけだ。
しかしそれは、好事家やマニアが選び抜くホビーの中ではアウェイへ向かう要素でしかなかった。ウルトラの父や帰ってきたウルトラマンの、過剰なまでのマッチョ造形は、担当や戦略ミスだったのだろうが、逆にアニメキャラ故にマッチョ造形の方がリアルに映える『ザ★ウルトラマン』(1979年)のウルトラマンジョーニアス等もあれば、完全本放映時スーツ造形準拠のウルトラマンレオ(Ver.1)やウルトラマン80。「あえて」「逆」に、現代リアタイの、平成のスーツのマスクに似せて造形された、ウルトラマンレオとウルトラセブンのVer.2と、多彩な方向性や方針が混沌としてしまったのがULTRA-ACTであったが、それでも限界論はあり、ULTRA-ACTが「まぁまぁ」で終わってしまった「主演作品時の着ぐるみの再現」を、見事にやってのけているのが、現状のウルトラS.H.Figuartsなのである。

脚部の折り畳み。ULTRA-ACTとは誤差かもしれないが、これ以上の折り畳みは不要である。

この邁進は留まるところを知らず、さらなる「実物へ似せる」を極めて(ビジネス的にはさらなる高額商品の存在価値を高めるため)極限までスーツへ寄せた「S.H.Figuarts 真骨彫製法」というブランドが立ち上がり、仮面ライダー新1号や仮面ライダーBlackが話題を呼び、上でも書いたが記念すべきULTRA ARTS100体目で、初代ウルトラマンの真骨彫製法版の発売がアナウンスされたのである。

頭部を側面から。うんセブンだ。筆者が半世紀以上愛してきた、ウルトラセブンの横顔だ。

こうなると、筆者のような世代は天邪鬼になる。
2022年2月冒頭には、バンダイSPIRITSからは公式で、既に発売済みの「S.H.Figuarts 真骨彫製法ウルトラマンティガ」と、今度発売される「S.H.Figuarts 真骨彫製法ウルトラマン」を、握手させることが出来るパーツが、オプションとして着いてくるという告知と写真が公開された。それは明確に、実際に放映された映像作品『ウルトラマンティガ』(1996年)で、初代ウルトラマンがメタ的に登場した『ウルトラの星』(脚本・上原正三のクライマックスシーンの再現なのだが、それは最高峰の名場面シーン完璧再現に見えて、実は究極の間違いでもあるのだ。『ウルトラの星』に登場した初代ウルトラマンは、確かに平成で活躍した初代ウルトラマンの中でも、三本の指に入るレベルの高い再現性の造形であるのだが、かといって1966年の『ウルトラマン』本編で撮影に使われた実物ではない。スーツアクターももちろん古谷敏さんではないので、プロポーションも違ってくる。そうなると、今度はティガのスーツアクターも、「S.H.Figuarts 真骨彫製法ウルトラマンティガ」でモデルスキャンされた権藤俊輔氏ではない(普段ティガに入っている権藤氏が初代ウルトラマンに入っていて、この時のティガには中村浩二氏が入っている)ので、違ってくるという、些細かつ明確な「間違い」が発生してしまうのである。

旧UDP時代のDVDの1巻ジャケットの有名な写真
近いポーズで比較。殆ど着ぐるみ。

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