ガンプラビジネスの迷走

ガンプラビジネスは、80年代最後期以降は、迷走しつつ二極化していった。
一方では、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(以下『逆襲のシャア』)』(1988年)『機動戦士ガンダムF91(以下『F91』)』(1991年)『機動戦士Vガンダム(以下『Vガンダム』)』(1993年)といった、富野総監督による「常に新しいガンダムとモビルスーツを」という、映画、テレビをポータルにした新作とそのプラモデル化。
もう一方では、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争(以下『0080』)』(1989年)『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY(以下『0083』)』(1990年)『機動戦士ガンダム 第08MS小隊(以下『08』)』(1996年)のように、OVAをポータルとして「『ガンダム』で描かれてなかった、一年戦争の別の話」を舞台に、ザクやグフ、ジムやガンダムをリファインして模型化するというビジネス。

コンテンツとしては、王道のテレビシリーズや映画と、OVAというハンデキャップマッチになってしまうが、ことガンプラの売り上げ数字的には、決して『逆襲のシャア』や『F91』『Vガンダム』がOVA各作品より勝っていたとは言い切れず、ガンプラ的には『0083』商品展開のように、意図的にコストを抑えて改造必須のハイエンドユーザー向けへ振ってみるという試みを挟みながらも、結局物語やテーマには関心がなく、ザクやガンダムのメカデザインにしか興味がない層には、思い入れの深いザクやグフやドムがリファインされて登場する『0080』『0083』『08』の路線が受け入れられてしまい、当初の『ガンダム』の設定の軸であった「連邦軍のガンダムは試作のサイド7試験用だけ」も、なし崩し的に無かった設定になり、ガンダムもグフやドムのバリエーションも、一年戦争の中ではゴロゴロ存在していたということになってしまう結果を生んでしまった。

もっとも、少なくともそういったビジネスモデルの始祖である『0080』に関しては、『逆襲のシャア』も兼任したメカデザインの出渕裕氏にしてみれば、当初は「『0080』で登場するザクやドムは、『ガンダム』のザクやドムと同じ機体であり、デザインが違うのは、単純にアニメーション描画技術の向上で、解像度が上がっただけ」という認識であったらしいが、バンダイサイドのビジネス的都合方便によって、全ての登場モビルスーツが『ガンダム』登場のザクやドムとは別機体になってしまい、その後の混乱(ガンプラビジネス的には良い混沌)を生む結果に繋がったというのが本当のところらしい。

そういった土壌から、過去のモビルスーツも未来永劫の資産となるべく立ち上がった、マスターグレード(MG)、ハイグレード・ユニバーサルセンチュリー(HGUC)という、2種の現行ガンプラビジネスの基礎を作ったのである。

ナレーション「ジオン公国を名のる宇宙都市国家は、月のむこうに浮かぶ。いまここに、ザビ家の末弟、ガルマ・ザビの死が急報された」
ドズル「兄貴! 俺はまだ信じられん。今にも、あいつが顔を出すんじゃないかと……」
ギレン「過去を思い至っても、戦いには勝てぬぞ。ドズル」
ドズル「しかし……あやつこそ、俺さえも使いこなしてくれる将軍にもなろうと……楽しみにもしておったのものを……」
デギン「……ドズルの言う通りだ。……だからだ、……ギレン。静かに……鄭重に……ガルマの冥福を祈ってやってはくれまいか?」

次でガンプラ論は最後になります。ガンプラの現状と現代を語るガンプラシリーズクライマックス。
次回「『シン・機動戦士ガンダム論!』第13回『ガンプラを語り尽くせ!・5』」
君は、生き延びることができるか。

(フィギュア再現画像特殊効果協力 K2アートラクション)

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