スーパーロボットまんが王道演出の数々

『ガンダム』が、メイン玩具が初動で売れ行きが悪く、Gアーマーとの合体セットがクリスマスに大ヒットをして巻き返したという逸話は以前連載開始の時に書いたが、それは単なる玩具的テコ入れの結果ではなく、初動からこうして丁寧に、メカと人が“慣れ合っていくプロセス”を、順序良く違和感なく描いていった先で、クローバーが用意したガンダムの基本合体ギミックを、ホワイトベースのクルーが戦局に応じて十二分に引き出せるようになったタイミングに辿り着いたところで、Gメカが合流した結果だとも言えるわけである。

そして26話のラストでシャアが語る「私のプライドを傷つけたモビルスーツだからな」という、“典型的な悪役ライバルらしい台詞”も含めて、2クールが終わった段階で富野監督は、このままだと『ガンダム』が打ち切られてしまい、そうなればテーマだ、ニュータイプだのと言っていられない、という状況を、正しく“読んで”ロボットまんがの王道セオリーやルーティンを、表層上に取り入れる作業を、並行して行ったのかもしれない(だがそれは、富野監督が『ガンダム』で語りたかった要素とは全く関係がないので、映画版ではことごとくカットされているのである)。

その流れで、ベルファスト戦では、海軍(?)へ転属にされたシャアが率いるマッドアングラー隊がメインの敵になり、つまり敵メカニック絵的には、水陸両用モビルスーツという概念が画面を彩ることになる。
以前も書いたが、このタイミングから『ガンダム』では、最終回までほぼ1話に1機に近いペースで新型メカがジオンから送り込まれてくるのであるが、均等に毎回1機というわけではなく、戦争の激化と兵器のインフレ、ドラマの急展開などと歩調を合わせて「毎回ヤラレメカを出す」ロボットまんが的義務に近いノルマをこなしてみせたのは、富野監督の力量と、大河原邦男氏のデザインセンスのコラボの成果だろう。

まず、最初に登場した水陸両用モビルスーツの敵メカが、第26話から、ゴッグ(余談だが、今ではこう呼ばれているモビルスーツは、放映当時の正式名称は「ゴック」であった。今回写し書きしているAR台本にも「ゴック」と書かれており、また、他の水陸両用モビルスーツが、ズゴック、ゾゴック、ゾック、等、没も含めたネーミングで考えると、確かに「ゴック」の方が相応しい)、ズゴックに加え、モビルアーマーという新概念を持ち込んだグラブロまでが一気に登場。

ここから、ジャブロー戦までで、ゾック、アッガイ、グラブロが殆ど単発登場のメカであることと「敵メカのメインの水中量産型はズゴックだ」と印象付けておくことで、その後に展開するジャブロー戦で、シャアが乗る「赤いモビルスーツ」が、ザク同様「量産型をブラッシュアップした」ズゴックであることへの伏線にもなる。

アムロ「あ!? ミデアが! まさか、マチルダさんのミデアじゃあ……」
マチルダ「モビルスーツか!?」
アムロ「しまった! ホワイト・ベースに! うっ!」
ガイア「フン! 連邦のモビルスーツ! 噂さほどではないわ! うぉーっ!」
マチルダ「あと、一息でホワイト・ベースは生きのびるというのに! こんな処でむざむざと傷つけられて耐るものか!」

次回「『シン・機動戦士ガンダム論!』第25回 スーパーロボットアニメとしてのガンダム・6」
『ガンダム』Gアーマー登場から、敵ジオンの水陸両用モビルスーツまで。加速するメカニックアニメの魅力!
君は、生き延びることができるか。

(フィギュア再現画像特殊効果協力 K2アートラクション)

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事