前回は「三留まゆみ×市川大賀 第一夜「三留まゆみと『ファントム・オブ・パラダイス』と」」
大賀 そう考えると、三留さんにとってGSブームはギリギリ、リアル体験なんですね。そういやぁ、三留さんと言えば『ファントム(『ファントム・オブ・パラダイス』)』、そしてもはや「『ファントム』といえば三留さん」になっているわけですが。三留さんは『ファントム』と出会ったのは、リアルタイム公開時だったんですか?
三留 いえ、遅れてます。あれ(『ファントム』)はねぇ……名画座! 本当はね、『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年 監督: Jim Sharman 原題: The Rocky Horror Picture Show)が観たかったの。『ファントム』の方は一応その前に、大塚名画座の方で予告編は観ていたんだけども。でもまぁ当時としては、『ロッキー・ホラー・ショー』で(上映時には観客が)大騒ぎをするらしいと。それをぜひ観てみたいなと思って名画座に行ったのが、1977年の秋でした。で、『ロッキー・ホラー』といえば『ファントム』と2本立て(興行が当時の流行)なんで、まずは『ロッキー・ホラー』目当てで観に行ったのね。で、『ロッキー・ホラー』(上映時)には、ピンヒールの姉ちゃんとか、いろいろ怖い人たちばかり(観客)がたくさんいて、(上映に併せて)踊るし、米を投げるし、新聞紙かぶるし……(笑)
大賀 『ロッキー・ホラー・ショー』は確かに、元のアメリカでは観客が、上映と同時にいろいろ騒ぎ遊びまくる映画としては有名だったんだけど、それを当時、日本でもやってたんですか?
三留 やってたの! その後80年代に、日本たばこ(産業)の配給で、ユーロ・スペースがオールナイトでやった、二度目の上映の時には、もうそのショーが引退しちゃってて「じゃあ、どうすればいいのかを、プログラムに書いてください」って言われたの。でも、私は(『ロッキー・ホラー・ショー』観客)最後の世代だから、そこ(観客はどこでどんなリアクションをすることが定番なのか)はもっと詳しい人達がいるはずですって言ったらば、「いえ。これを書ける方は、皆さん引退してしまってるので」って言われて。確かに(70年代上映時の盛り上がりは)80年代の騒ぎよりもっとすごかった。だって、後になってライズ(渋谷シネマライズ)でやった時(1988年7月)なんかは、スクリーンに物を投げないで下さいとか、水鉄砲禁止とか、ライターの火をかざすのはダメとか、「映画館でやっちゃいけないこと」の制約がいっぱい出てきていた時代。でも(77年)当時はナンデモアリだったんです。だから『ロッキー・ホラー』観に行って「すごいなぁ」って思って、その後に『ファントム』が始まったら、途端に『ロッキー・ホラー』が宇宙の果てにバーンって飛んでっちゃったのね(笑) で、(『ファントム』を)もう一回観たいんだけど……。