前回は「三留まゆみ×市川大賀 第十四夜「三留まゆみと小林よしのりとネトウヨと」」
三留 そうね。それと「あのころは良かった」になっちゃったでしょ。だから美談だけじゃないんだよね。本当は今ウルフマンが言ったように、ドロドロした部分とかあったわけだしさ。「貧しくてもみんな幸せでした、ハイ」ってわけではないよね。
大賀 だから僕は、そういった諸々を含み、自分の基礎教養をゼロから叩き直す意味も込めて、1920年代から、僕がリアルタイムで観た70年代以降も含めて、掛け値なく900タイトルの邦画、洋画、ドラマのDVDを集めて、それら全てを時系列順に観返すことで、文化史から見える「歴史の真実」みたいなものを、追いかけていければと考えているわけです。一方で三留さんは、逆に現役の映画評論家として、日々、最新の映画の試写や批評に追われているわけじゃないですか。そういう目で見て行った時に、日本映画の現状って、どう思われます?
三留 邦画は結局……。一つ言えることは「東宝の一人勝ち」。でも、インディーズの映画も出てきて、「映画が撮りやすくなった」っていうのは、随分前から言われてきているんだよね。だけど、「映画は出来たんだけど、配給が出来ない。劇場にかけられない」っていう部分ね。そこは大きいかな。劇場にかかっても、(上映は)朝の一回だけとか、レイトショーだけとか。でも、昔ってそうじゃなかったじゃない。昔の日本の映画は、洋画、邦画に限らず一日中上映をやってたんだけど。今はシネコンが増えた。それもTOHOシネマズみたいな大きいところから、小さなシネコンまで。そうなるとね。例えば見逃した映画を探していて、シネコンで上映されているのを見つけて、あ、良かったと思って、改めて時間をチェックすると「23:30より一回きり上映」とかさ。それってもう、上映していることにならないでしょ? しかも、シネコンも、行ってみないと、どれぐらいのスペースで上映されるのかが分からないし。あと、本来、映画ってもっと気軽に観られる物だったはずなのね。買い物したついでに、フラッと映画館に寄って、ナントカって映画を観ました、みたいな。あるいは、この映画はどうしても観たいから、前売りを(予め)買っておいて、隙あらば飛び込もう、みたいな。でも、映画がそういうものじゃなくなっちゃった。特にシネコンとかだと、「残席いくつ」みたいなところで並ばされてサァ! 5分後に始まる映画も、30分後に始まる映画も、同じような列に並ばされて、モニターを見ていると(残席の)数字がどんどん減っていっちゃうわけ。それで、いざ自分の順番になって「(座席は)ココとココ、どちらになさいますか?」とか聞かれて、選ぼうとしても選択肢が一番前の端と、一番後ろの端しかないとか。しかも、行ってみないと、(座席と)スクリーンとの距離が分からない……。もちろん、昔みたいに(同じ映画を同じ座席で)続けて観ることもできない。シネコンって、イマドキの子は馴染んでて、確実に観られるし、清潔だし、明るいし、そういうものでいいんだろうけども……。だけど、私に言わせれば映画館って違うのよね。私が知ってる映画館っていうのは、なんか「ヤバイ場所」で(笑) 不良が集まっててね(笑)
大賀 全館禁煙なのに、みんな煙草好き放題吸っててね(笑)
三留 そうそう!