前回は『犯罪・刑事ドラマの50年を一気に駆け抜ける!(70年代をナメるなよ)』Part4

重苦しく暑苦しく、だが弱者に優しい、刑事ドラマの金字塔タイトル

 この手の回は概ね9割8分くらいの確率で(それ、ほぼ100%じゃあ……)「市川森一が小次郎なら、俺が武蔵だ。俺は奴に必ず勝つ!」と怪気炎を上げた、「情念の鬼才」こと長坂秀佳による脚本作品。
 長坂の真骨頂は「俺が伊上(勝)からメインの座を奪ってやったんだよ!」と意気揚々と語った『人造人間キカイダー』(1972年)などに顕著だが(実際は、レギュラーを抱え過ぎてパンクしかけていた伊上が、長坂が参入してきたのを、ちょうどよかったとばかりに逃げただけ)特捜で、話が始まって6分半以内に、突然都内で爆弾が炸裂したり、仕掛けられた時限爆弾の、捜索や解体や爆発(結局爆発しちゃうのかよ!)がメインになるエピソードは、概ね9割9分ほどの確率で長坂作品(だからそれって100%じゃあ……)。
 ちなみに長坂は、市川森一をライバル視する余り、自分がメインを張っていた特捜で『脚本家対決! 長坂秀佳VS市川森一シリーズ』をやりましょう! 同じテーマ、題材で、俺と奴が脚本を書き、数字(視聴率)で雌雄を決するんです!」 とか、誰も得をしない妄言を喚き散らし始め、独断にマスコミに発表するも、そこで長坂アナウンスを聞いて押しかけてきたマスコミを前にした市川森一は寝耳に水で「そんな企画は知らないし、話が来ても受けませんよ(そりゃそうだわな)」と切って捨てたという、やるせなさ過ぎる実話を残していたりもする。

 ある意味で、同じ「刑事ドラマ」としては「力に対して力をもってして、武力をもって鎮圧し、全員射殺する」という思想の『西部警察』とは対極に位置したこの『特捜最前線』。
 その長坂・大滝『特捜』の中でも白眉なのが第172話『乙種蹄状指紋の謎!(監督・天野利彦)』

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事